中大ラグビー部にスピード革命。遠藤哲HC&里大輔氏がタフに走らせる。
実際の加速力もつけるべく、走りの専門家にも声をかけた。サッカーなど他競技でも活躍する里大輔氏だ。ラグビー界でも、静岡聖光学院高や年代別日本代表でも走りのフォームや身体の使い方を指導してきた。スーパーラグビーのチーフスでプレーした日本代表のアタアタ・モエアキオラも、20歳以下日本代表などで出会った里氏の助言でステップが鋭くなったと話す。
里氏の中大でのコーチングは2週間に1回ほど。身長170センチながら激しく身体を当てる鬼頭は、「自分自身、速くなった」。タックルをして倒れた後は、ただ両手で地面をつくだけではなく片膝を立てながら起き上がるよう助言された。手応えをつかめた。
「足の使い方から教わって、ラグビーに使えるスピードが本当に速くなった」
確かに立正大戦に出た各選手とも、キックを追いかけるチェイス、遠い間合いからのタックルが明らかにシャープだった。里コーチ自身も「とんでもなく走っていますので、いまは身体的にはしんどい状態だと思います。身体が重たいのでキレはない。ただ、選手に聞いても『まだまだ全然、走れます』って」と前向きである。
測定の一環で「4秒ないし6秒のスプリント走をして何メートル先に進めるか」をチェックしたら、成長を実感できる。
「全体的には、シニアレベルで設定した目標値は大きく超えています。最初は高校生に設定するようなタイムもクリアできなかったのですが。今後は、出せるようになった速度をラグビーでどう出すかを見たいです。まだまだ用意しているステージにはたどり着いていないので、とにかく楽しみです」
遠藤HCはこうだ。
「彼自身のコーチングスキルに期待して任せています。スキルが得られるのはもちろん、『ここまで緻密にやるのか』『逆に、少し手を抜いただけでもここまで落ちてしまうのか』と、スピード追求をきっかけにいろいろなことを学べる」
内々で掲げる目標は、低くないようだ。鬼頭は「(その目標は)きっと中大関係者以外が聞いたら笑うと思います。でも、僕らは本気で信じてやっている」。打たれている布石への手応えがにじむ。
「八王子(本拠地)でもしんどいことへ取り組んできて、進捗状況自体は本当にいい。僕がいままでいたなかでも一番です。遠藤さんは理に適ったことを教えてくれる。細かい部分にもこだわる。ミーティングも増えました。リーダー陣も遠藤さんと本音でいろんな話をしながら進んでいます」
リーグ戦の開幕は8月31日。前年度王者の東海大が相手だ。スピード革命という名の巨木をなぎ倒すための準備が、着々と進んでいる。