国内 2019.08.08

トヨタ、リーグ戦は出場の方向

現役選手2名が薬物所持で送検の名門。今後の対応について会見

トヨタ、リーグ戦は出場の方向
左から愛甲氏、河合氏、宗雲氏、大藪氏(撮影:吉田宏)

 薬物所持で2人の現役選手が逮捕、送検されたトヨタ自動車が8日、愛知・豊田市のトヨタスポーツセンターで会見を開き、事件の謝罪と今後の対応を説明した。

 ラグビー界を長らく支え、多くの競技で日本のスポーツ界を牽引してきた企業での不祥事に、会見には同社の河合満副社長、愛好和弘スポーツ強化・地域貢献室室長、ラグビー部の宗雲克美ラグビー部長、大藪正光チームコーディネーターが出席。河合副所長が「スポーツ界全体の信頼やイメージを損ねる行為であり、心よりお詫びします」と謝意を伝えると。参列者全員で深々と頭を下げた。
 
 注目されたチームとしての処分は、現在の謹慎状態を今月18日まで継続。翌19日からは、個人練習を再開することを発表した。チームとしてはW杯日本大会終了を一つの区切りとして、11月3日から練習を再開する方針。トップリーグ・カップは辞退したが、来年1月に開幕するリーグ戦について、同副社長は「日本ラグビー協会にもご相談させていただきながら進めたい」と参加する方向性を明かした。同時に、硬式野球部など7競技が指定されていた重点強化運動部からのラグビー部の除外も発表。当面は除外期限を設けない方針で、強化費や選手採用、練習時間などでの制約を受けることになる見通しだ。
 
 河合副社長は、事件発覚当初はラグビー部の廃部が前提だったことも明かしたが、豊田章男社長はじめ首脳陣の話し合いの中で、「部を無くしても根本的な問題の解決にはならない。この過ちを背負って部を再建することの方が大切なのではないか」と、チーム存続という結論に至った経緯を説明した。
 事件発覚後にはラグビー部員、スタッフら72人が外部機関による毛髪検査を受け、容疑者と同じ寮に住む硬式野球部、ボート部の部員、ラグビー部と同じトヨタスポーツセンターを練習拠点とする女子ソフトボール部の選手らも同様の検査を受けたが、全員が薬物反応はなかったという。
 ほとんどの選手が事件とは関係ないこと、職場での部員たちの働きぶりや、社員やファンからのラグビー部の復活と活躍を望む声も〝存続〟の方針を後押ししたようだ。
 
 事件が起きた要因としては、ラグビー部OBでもある宗雲部長が「勝つことを優先し、スピード感を持ったチーム変革を求めるあまり、身の丈に合った組織運営や、本来備えるべき倫理観が欠如」「仲間の些細な変化にも気づかない雰囲気が当たり前になっていた」「薬物に関する自主対応の不十分さ」を指摘。今後の再発防止へ向けては
 1 正しい倫理観、スポーツマンシップの醸成
 2 スタッフの役割の見直し
 3 抑止力の向上
 を表明した。
 そのために、部員らが参画して「ラグビー部行動指針」を作成。内容は非公開だが、チームとしての活動に加えて業務時間のあるべき姿なども盛り込まれた、選手としてのあるべき姿が示されているという。スタッフの役割の面では、インティグリティーマネジャーを外部より召喚するなどの施策も実施する。ラグビー部では、今後は地域のボランティア活動なども実施していく方針だ。
 
 W杯後の入団が決まっているニュージーランド代表主将のNO8キアラン・リードについては、チームの存続が決まった段階で、予定通り入団する方向だという。その一方で、ジェイク・ホワイト監督に関しては「契約は個人的なことなので、この場では控えたい」と説明。来年1月のリーグ戦での指揮についても、同様に明言を避けた。  (吉田 宏)

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