這い上がった! 日本代表・茂野海人、今季初テストマッチで9番を背負う。
ワールドカップの開幕まで55日。
今季テストマッチ初戦。
そこで先発の座に起用される。
大舞台でサクラのジャージーを着ることを目標とする選手にとって、これ以上気合いの入るシチュエーションはないだろう。
7月27日に釜石鵜住居復興スタジアムでおこなわれるフィジー戦で茂野海人がジャパンの9番を背負う。
ワールドカップが近づくにつれ、評価が高まっている。
2016年6月のカナダ戦で日本代表初キャップを得た。
続くスコットランド戦でも2試合に先発し、その第2テスト(東京)では同年のトライ・オブ・ザ・イヤー(ワールドラグビー選出)にノミネートされるプレーでインゴールに入った。武器である思い切りのいいランプレーを、思う存分アピールできたシーンだった。
しかし秋には代表スコッドに招集されず、2017年はアジア勢との対戦のみに終わる。
昨年も11月のロシア戦のみ出場。道は、険しかった。
そんな中で、力を積み上げてきた。
進化の場はスーパーラグビーだ。
2016年からサンウルブズのメンバーに入り4シーズンで29試合に出場。今季は9試合に出場して8試合に先発した。
「サンウルブズに参加し、世界レベル、高いレベルの中に身を置くことで、自然と周囲に(高みに)引っ張られた気がします」
一歩一歩階段を昇り、チャンスをつかんだ。
もともと身体能力は高い。改善されたのは判断力だ。
「2016年は、まだ若かった。勢いでプレーしていた気がします。でもいまは経験の部分が高まって、落ち着いて状況判断ができるようになったと思います」
ゲーム理解度が深まったからだ。
宮崎合宿でも主力組と思われる側に常に入り、積極的にチームを動かした。「ジャパンはサンウルブズより個々の役割りが明確化されていてプレーしやすいし、一人ひとりがそれを理解している。その中で全体をオーガナイズするのもSHの役目」と話す。
大阪の岬ラグビースポーツ少年団でラグビーを始め、江の川高校(現・石見智翠館)でプレーを続けた。
大東大へ進学。卒業後もトップレベルでのプレー続行を希望したが、なかなか声がかからなかった。自らOBを通じてNECグリーンロケッツへ存在をアピール。その結果、同チームへの入団が叶った。
用意された道でなく、自ら切り開く人だ。NEC在籍時には、ニュージーランド留学中にオークランド代表に選出され、同国国内選手権の決勝にも出場した(現在はトヨタ自動車所属)。
NEC時代のチームメートでもあるSO田村優は言う。
「もともといい選手でしたが、いま、もっと良くなった。ここで走ればいいのに、と思うと走っています」
自身の強みを、「大きい舞台で、いい緊張感を持ちながら強気のプレーができるところ」と話す。這い上がってきたエナジーの原点は「負けず嫌いですから」。
フィジー戦で自身の持てる力を出し切り、チームの長所を引き出せたなら、大舞台での9番がさらに近くなる。