国内 2019.05.30

「足が震えた」という財産。明大の児玉樹が経験したふたつの立場とは。

[ 向 風見也 ]
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「足が震えた」という財産。明大の児玉樹が経験したふたつの立場とは。
5月19日の東海大戦でプレーする明治大の児玉樹(撮影:長岡洋幸)

 新進気鋭のレギュラー候補。次世代の主力格。明大ラグビー部2年の児玉樹はこの春、複数の立場を経験して視野を広げている。6月2日には千葉・中台運動公園陸上競技場で、一昨季まで9年連続大学日本一の帝京大と招待試合をおこなう。

「相手のやりたいラグビーをされてしまって、そこを受けてしまった」

 反省したのは5月19日。東海大との招待試合を40-24で制した直後のことだ(静岡・草薙総合運動場)。

 アウトサイドCTBとしてこの春4度目の1軍戦先発も、メンバーの入れ替えなどがあった後半は7-24と劣勢。突破力とオフロードパスを繰り出し33-0とリードした前半には触れず、「自分がもっと行けるところもあったろうし、課題が残りました」とうなだれた。

 身長192センチ、体重103キロ。球を動かすBKの選手にあって、国際的選手に負けない体格を誇る。秋田工高時代から突破力が光り、当時のコーチいわく「いつもボールを蹴っている」とストイック。高校日本代表に選ばれた。

 明大入りした昨季はインサイドCTBとして主力組に絡み、1月12日の大学選手権の決勝には後半40分から出場。場所は東京・秩父宮ラグビー場。22-17とわずか5点のリードを背負い、相手ボールでのラストワンプレーを迎えた。

「ワントライで逆転。1回やられたら終わり。言葉では表せられないですけど、そこに立った人しかわからないような感覚で。びりびりした」

 ノーサイド。22年ぶり13度目の優勝を決める。自分の足でてっぺんに立った感覚を皮膚に刻んだうえで、今年はレギュラー定着を目指す。今季の東海大戦で勝っても反省するのは、自然な流れだった。改めて言う。

「出た時間はそんなに長くないですけど、立っているだけで足が震えるあの経験ができたのは、当時の1年生では自分だけ。常にあのイメージを頭に描きながら日々の練習、試合に臨めているので、あまり緊張しないでできています」

 5月26日には、東京・明大八幡山グラウンドで法大と激突した。関東大学春季大会Bグループの4戦目だったこの日は、選手層拡大のためか控え組が数多く先発。児玉は田中澄憲監督から「お前が引っ張っていけ」と役目を言い渡されたという。

 71-14。大会4勝目を挙げる。

「Aチームの試合に慣れていないメンバーが多いなか、自分は今季初戦から出させてもらっていた。下級生ですが、(周りを)引っ張っていくこと、いいプレーがあった時に盛り上げることと、慣れていないメンバーがやりやすい雰囲気を作るよう意識しました。後半、トークで(全体の動きを)修正して0点で抑えられた。メンバーが代わってもしっかりいい形でできた。いい経験ができたと思います」

 普段と異なる役柄を演じたなか、新2年生は自信をつかんだのだ。ファン注目の帝京大戦へは、「前回の東海大戦よりも厳しいゲームになる。チームと個人の課題を見直し、修正して、帝京大戦にフォーカスしたいです」。すべての体験を肥やしにして、強い選手となれるか。

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