沖縄から世界へ。日大ルーキー普久原琉の独自性。
姓はふくはらで、名はりゅう。ファーストネームは、琉球を世界に広める人になって欲しいという家族の願いから付けられた。それが人名用漢字に認められたのは、生まれる3年前のことだった。
日大ラグビー部1年の普久原琉は、サミットが開かれた2000年に沖縄で生まれ、幼稚園児の頃からコザクラブジュニアの練習に通った。美東中を経て兄の虎(たいが)の卒業したコザ高ラグビー部へ加わり、防御のひずみを突く走り、タックラーに捕まりながらもパスを放れる懐の広さを披露。3年時には高校日本代表候補に名を連ねた。バスケットボール経験者らしく、スペース感覚に長ける。
さらに興味深いのは、高校2年のうちからチームで主将を任されたことだ。決断を下した山川康平監督は「人間性、といった部分で成長してもらいたくて。(当時の)3年生に相談して、納得してもらいました」と説明する。当の本人はこうだ。
「普通の人ができない経験ができた。他の3年生の主将よりも先にチームをまとめることができて、試合でも落ち着いてプレーできた」
この春入った日大では、周りの先輩からは「まじめ」と感心される。開催中の関東大学春季大会のBグループでは、早速レギュラーのFBとして経験値を積む。
「(大学生は)コンタクトが強くて、まだ慣れてない感じですけど」
今季の日大では、多くのルーキーが1軍入り。佐賀工出身の水間夢翔も先発WTBとして春季大会に出続けており、5月11日の青学大戦では登録メンバーの23名中8名が新加入選手となった。
中野克己監督は、「怪我人が多く出てしまっていて、代わりに出てくる選手が1年生というのが現状。でも、よく頑張ってくれている」。特に普久原については、「つかみどころがないというか、飄々、淡々とやっているなと。擦れたところもなくて、一生懸命やっています。手先が器用」。一方で20歳以下日本代表候補だった左PRの坂本駿介主将は「うまいですね。これまでの日大にいないタイプ。捕まってからでも(ボールを)離せますし、裏にも(キックを)蹴られる。僕が見る限りは物静か。クールです」と見る。主将はこうも言う。
「1年生には緊張もあると思う。自由にやらせたい。寮生活のルールを徹底するのは欠かせないことですが、ラグビーでは上級生、下級生、関係なく言い合ってという感じです。ラグビーでは壁を作っちゃいけないので、言い合える関係を作りたいです」
青学大淵野辺グラウンドでの青学大戦では、坂本主将らFW陣がスクラムで光って64-14と完勝した。普久原も持ち味を発揮し「(相手の芯を)ずらす部分は大学生相手でも通用した。これからも伸ばせたら」と安堵した。この日の自分が活躍できた条件や時間帯などを踏まえ、こんな改善点も見つけたようだ。
「アタックでもディフェンスでも、前の人とコミュニケーションを取れるように意識したいです。そうすると、(チームの)動きを統一できるので。いい声を出したいです。あとは、まだ積極的に行けていない。ボールタッチを増やしたいです。停滞した時でもラインブレイクができるようにもしたい」
目標の「怪我なく1年間を通して試合に出られるようにしたい」を叶えるべく、試合や練習の後は故障歴のある箇所へのアイシングや交代浴を欠かさない。自己管理も徹底する。
沖縄が生んだ若きアスリートは、淡々と自分の未来を切り開く。