「コミュニケーションを取っていいニュースを」。山田章仁、新天地NTTコムでしたいことは?
天候には恵まれていた。窓の外の天然芝グラウンドでは、子どもたちを対象にしたタグラグビー祭りがおこなわれている。室内では、普段トレーニングに用いる人工芝スペースに液晶画面や椅子が配置される。即席の会見場だ。集められた報道陣の脇では、浦安ラグビースクールの選手が体育座りをして待っている。
定刻になると司会者に招かれ、建物の2階からこの日の主人公が駆け降りる。内山浩文ゼネラルマネージャーと握手をかわし、席につく。2日前には、日本代表候補にあたる「ウルフパック」の一員としてニュージーランドで試合をしたばかりだ。
ラグビー日本代表25キャップを持つ前パナソニック ワイルドナイツの山田章仁が、4月7日、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(以下、NTTコム)への入団会見を実施。本拠地の千葉・アークス浦安パークで、アンダーアーマー社製の「アッキーTシャツ」をメディアに配布したり、会見の様子を全世界に生配信したりと、「どんな些細なことでもやれることはやりたい」という意志を示した。
2020年1月からの国内トップリーグでは、NTTコムの一員としてプレーする。意気込みを聞かれると、こう宣言した。
「シンプルにトライを取ること。そこはラグビーをやっている人にも、やっていない人にもわかりやすいので、軸をぶらさずこだわっていきたい。それにつけ加えることもいっぱいあるんですけど、まずは新しいチームに来たので周りとしっかりコミュニケーションを取る。それをもっと広げて、ファンの皆さん、ここに集まってくれるメディアの皆さんとコミュニケーションを取って、ひとつでもいいニュースを全世界に届ける。そんなシーズン、生活を送りたいですね」
移籍の経緯については「(昨季の)シーズン後に時間がありましたので、2019年に向けてどんなリスクを取ってどんなチャレンジをするかが自分にとってベストかを考えた。その結果がシャイニングアークスさんだった。2019年に入ってから、気持ちが固まってきたと思います」と説明する。
前所属先時代は、社会人アメリカンフットボール・Xリーグでの活動も両立していた。地域との共生を進めながら強化を目指す新天地に関し、「近年力をつけていて(昨季、国内トップリーグで5位)、見ていて楽しいラグビーをする」と印象を語った。新しいチームメイトの金正奎、石井魁、アマナキ・レレイ・マフィなどとは、過去の日本代表関連活動や個人トレーニングを通し、親交がある。
内山GMが自軍を社員とプロの「ハイブリットなチーム」であると説明したのを受け、こうも続ける。
「ハイブリットなチームというのは、日本ラグビーの特徴でもある。そのなかで僕自身は、プロ選手としてスポーツの魅力を伝えていきたい。ラグビークリニックもそうですけど、SNSを中心に、浦安、自分の周りの魅力を伝えていけたらと思います」
ワールドカップ日本大会開催年の移籍には、「多少リスクはあるかもしれませんけど、それ以上にメリットが大きい」と強調する。結婚前からオフは頻繁に海外へ渡航しており、現在は家族の拠点をハワイに持つ。本拠地が東京ディズニーリゾートや成田国際空港とそう遠くない点を踏まえ、こんな期待を口にした。
「ワールドカップに向けても、その先のシーズンに向けても、オンとオフの切り替えが大事になってくる。僕自身の生活スタイル(の充実)に向けては、このシャイニングアークスがベストだという思いですね。優勝を目指して、それよりも大切なものを発信していく。そんな貴重なシーズンにしていきたいと思います。今年に至ってはワールドカップもありますので、NTTコムさんの看板を背負って日本中、世界中にひとつでも多くの嬉しいニュース、インパクトを届けられるように頑張りたいです」
質疑の延長で、日本代表としての日本大会での目標も問われる。「優勝にしておきましょうか。(トップリーグとワールドカップの)どっちも優勝で。お願いします」と笑った。