国内 2019.03.28

少人数チームで成長する方法は? 山口・宇部高3年、中山覚富の場合。

[ 向 風見也 ]
少人数チームで成長する方法は? 山口・宇部高3年、中山覚富の場合。
TIDキャンプに参加した宇部高校の中山覚富。着ているジャージーはレッズ(撮影:松本かおり)

 少人数のチームのほうが、伸びる。入学予定者を除く総部員数はわずか14名という山口県立宇部高校ラグビー部2年(新3年)の中山覚富(なかやま・あきよし)は、こう断言する。

「人数が少ないなりにできることをしっかりやれば、レベルアップも感じられる。やっていて楽しいです」

 3月24~27日、東京・栗田工業グラウンドで20歳以下(U20)日本代表の選手を選ぶ「TIDキャンプ 2018年度第6回合宿」がおこなわれた。有名大学在籍の選手が揃うなか、高校生も混ざっていた。いずれも通称「ビッグマン&ファストマンキャンプ」で目立った選手たちだ。

「ビッグマン&ファストマンキャンプ」は、野澤武史リソースコーチらが「TIDキャンプ」の一環で昨年12月に京都で実現。一芸に秀でた無印の星を集め、鍛えるのが狙いだった。全国の地区選抜などをつぶさに見た野澤が「ラグビー界での社会問題(伸びしろの大きな選手が競技を続けないケースなど)を解決する方法」として動かし、おもに全国大会の経験がない選手の意識を高める。そのひとりがWTB、FBを務める中山で、先のキャンプ中にMVPのひとりとして表彰された。野澤の述懐。

「彼はU17の中国ブロック代表だったんです。球際に強くて、倒れながら一個(ボールを)つないだりとおもしろい動きをする。一生懸命だし、間違いないなと」

 ちなみに今回は、辞退者を含め計24名ラインアップされた初代の「ビッグマン&ファストマン」のうち、中山を含めた4人がTIDキャンプに昇格。野澤は、U20日本代表の水間良武監督とのやりとりを振り返る。

「ある研修からの帰り道の電車で『誰かいない?』『お、いい選手いますよ』『教えてや』という話をして。まさか、本当に呼んでもらえるとは思っていなかったですが! ドイツのサッカー界では、フィジカルの弱い選手を上のグレードで練習させて下のグレードで試合をさせるらしいんです。いろんな枠組みで(連携を)やれば怪我も減らせる。いろんな選手がラグビーのトップを目指せる環境がある方がいいと、僕は思っています」

 中山は身長171センチ、体重70キロと小柄も、50メートルを6秒3で走るスピードと豊かなフットワークを持ち味とする。キャンプ2日目の25日は「あの時(ビッグマン&ファストマンキャンプ)は周りも高校生で思いっきりプレーできた部分はあったのですけど、今回は大学生。ビビってしまっている部分もあります」と告白していたが、野澤いわく「頭の回転が速い。一度注意されたら、2回目(同じ失敗)をやらない」。今回も「ビビッて」はいたという本人だが、その問題の解決方法をよくわかっていた。

「しっかりみんなとコミュニケーションを取って、打ち解けられたらいいなと思います」

 小学2年の終わりごろ、友人に誘われて宇部小野田ラグビースクール入り。上宇部中では「近くに中学生が入れるラグビースクールがなかった」からと、ラグビーと同時並行でしていたサッカーに専念。丸いボールの世界では、中国大会3位に輝いていた。

 宇部高でラグビーを再開したのは、「同じスクールだった子が同じ高校にいて、先輩たちから勧誘されたこともあって」。ここからは、置かれた状況を前向きに捉えて成長していった。

「正直、最初は部員が少ないのが嫌だったんですけど、合宿で人数の多いチームを見るとあまりボールを触る機会が少ない。あ、意外と人数が少ないチームでやっているほうがたくさんボールを触れて伸びているな、と感じました。人数が少ないことをマイナスに捉えるんじゃなく、人数が少ないからこそ一人ひとりがたくさんプレーできると前向きに捉える。そうすれば、もっと上達すると思います」

 大所帯のチームを否定するつもりはない。ただただ、与えられた環境を受け入れることからすべてを始めている。このあたりにも、野澤の指摘する知性を覗かせた。

 今回与えられた成長機会では、アスリートとしての心持ちも変えた。なにせ、世代最高クラスの選手が集まる場で刺激を受けられたのだ。自分の将来にも期待する。行きたい大学もできた。

「大学に進学してラグビーを続けたいと、最近、思っています。昔までは『ラグビーは高校まででいいかな』と思っていたのですが、こういうキャンプなどに呼ばれるにつれて『大学でも続けたい』と思うようになりました。昔からステップが好き。ボールを持ったら、自信があります。自分の持ち味では負けないような選手になりたいです」

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