明大&ジュニア・ジャパンの片倉康瑛、初の世界で感じた「日本人の良さ」とは。
今年、生まれて初めてカテゴリー別の代表に呼ばれ、生まれて初めてラグビーのための海外遠征に出かけた(高校時代にホームステイ経験あり)。終盤は日本の食事や友だちが恋しくなったと言うが、「試合はしっかり集中しました」。明大の新3年、片倉康瑛の話だ。
3月8~16日、ジュニア・ジャパンのLOとしてフィジー・スバでの「ワールドラグビー パシフィック・チャレンジ」に参戦。環太平洋諸国(アイランダー)の代表予備軍を相手に、計3戦を2勝1敗とした。
「フィジカルはまだまだ」と課題を認識しつつ、手ごたえをつかんだ。タッチライン際での空中戦、ラインアウトで、相手へ首尾よくプレッシャーをかけられたからだ。
「向こうが即席チームだったこともありますが、ラインアウトは明大のほうがレベル高いと感じました。アイランダーはセンスで捕るみたいな感じ。自分にとっては、ディフェンスがしやすかったです。自分たちはきちんとしたリフト、スピードで捕っていた」
幼少期に千葉・船橋ラグビークラブで楕円球と出会った。小2で神奈川へ引っ越してからは野球に転向も、東京・明治大学付属中野高で同級生の小島昂に誘われ再びラグビーの道へ進む。FBの小島とともに明大の体育会へ進むと、昨季、22年ぶりの大学日本一をレギュラーとして経験する。
春からは3年生。決意を明かす。
「去年は自分が引っ張ったというより、先輩たちの背中を見て付いていって、日本一の景色が見られた。本当に感謝しています。今年は、逆に自分たちが下の人たちを引っ張って、その舞台へ連れていけるようにしたいと思いました」
学生王者となった明大で認められたのは、攻守両面での仕事量、そして空中戦での強さだ。特にラインアウトでは、長い手足を活かすだけでなく細部の仕事にこだわる。
最高到達点でボールを手中に収め、ふもとに立つ選手への配球(デリバリー)を丁寧におこなう。支柱役(リフター)となった際はジャンパーの高さをかさ上げすべく、つま先を伸ばす。一連の動作を素早くおこなうのもルーティーンだ。
190センチというサイズは、大学ラグビーシーンでは大柄とされるが世界ではやや低身長と見なされるか。だから今回のパシフィック・チャレンジを経て、片倉は「日本人の持ち味を出していきたいです。小さなことにこだわっていることです」。自らの売りを再確認した。
さかのぼって2月17~20日。ジュニア・ジャパンのメンバーを選ぶ「TIDキャンプ 2018年度第5回合宿」(東京・栗田工業グラウンド)で、視察に来ていた伊藤鐘史(現 京産大コーチ)と話した。
伊藤は2012年からの4年間で日本代表36キャップを獲得。エディー・ジョーンズ ヘッドコーチが率いる当時のチームにあって、191センチのLOながら長らくラインアウトリーダーを任された。2015年のワールドカップ・イングランド大会では、出場こそ4戦中1戦のみもラインアウトの分析に注力した。相手が2メートル超の選手を揃えるなか、オール2メートル以下の隊列で自軍ボール保持率90パーセント台をキープした。
片倉は伊藤の日本代表時代の話を聞き、サイズを理由に世界をあきらめたくないと感じたようだ。今後直面するであろう、海外出身者との定位置争いも望むところだ。
「(将来、国内最高峰の)トップリーグでやるなら日本代表を目指したい。日本代表に入るには、ラインアウトの持ち味を継続したまま強くならないといけない。外国人選手に負けないフィジカルをつけたいです。いま100キロ(公式では102キロ)ぐらいですが、とりあえず105キロ(を目指す)。トップリーグ入りに向けては110キロは欲しいです」
3月25日、栗田工業グラウンドに片倉の姿があった。20歳以下(U20)日本代表の選手を選ぶ「第6回 TIDキャンプ」に呼ばれていたからだ。
U20日本代表は7月9~21日、ブラジルでの「ワールドラグビー U20トロフィー」に参戦。8月に21歳となる片倉も、大会のレギュレーションによってはU20日本代表入りの資格が得られる。日本一のチームの年長者として「明大のスタンダードを出していきたい」。練習中は、コンタクトの強度を高く保つ。