コラム 2019.02.08
【コラム】心の、フィジカル

【コラム】心の、フィジカル

明治大学 PR吉岡大貴。2年連続の決勝、5年目の結晶。

[ 野村周平 ]
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 入学後しばらくは、心身ともギリギリだった。朝練のために午前4時半~5時に起きて準備し、7時20分ごろには練習を切り上げて生田に向かった。当時は洗濯などの雑用も1年生の仕事。

 雑用や筋トレを終えてから授業の課題に取りかかり、徹夜が1週間近く続いたこともあった。

「あの時は結構、病みましたね。これじゃラグビーを続けるのはきついなって」。入学時に105キロほどあった体重は、一時2桁にまで落ちた。2年生からの進級時には単位が足りずに留年。

 吉岡は優勝メンバーで唯一の「5年生」だった。

 明大スポーツのサイトには「同期と勝ちたい、勝ちます!」の見出しで始まる2017年の吉岡の記事が残っている。1点差で敗れた帝京大との決勝では先発していた。あと少しで優勝に届かなかった同期の思いも背負って、5年目を戦おう。時に孤独を感じながらも部に残り、生田キャンパスでは遺伝子改良など生命科学体の研究にいそしんできた。

 迎えた2年連続の決勝。背番号18の吉岡の出番は試合終了間際に訪れた。明大は最後のピンチの場面で、FW前3人全員を代えた。勢いに乗る天理大ボールのスクラムだ。2回崩れた後の3度目の正直。それまでの劣勢を覆し、吉岡たちは天理大を押し返した。「スタッフは僕らを信頼して、あの場面で出してくれた。押す気しかなかった」。あの一瞬には間違いなく、5年生の意地が詰まっていた。

 もう一人の農学部のFL、朝長駿は「勉強でもやるべきことをやってきた分、メンタル的に強くなれた」と振り返る。

 努力は報われないこともある。でも、つらい時に踏ん張るか踏ん張れないかで、人生は変わる。勉強とラグビーを両立させた二人の努力は、報われた。つらい時に踏ん張れたから、報われた。

 吉岡はずっと、一つ下の後輩たちに心から受け入れられているか、不安だった。でも、優勝後に集まって飲んだ時、同じポジションの祝原涼介が「残ってくれてうれしかった。残ってくれたから、この結果になったと思う」と言ってくれた。その一言で、気持ちは楽になった。今は2年にわたって同期がいるという自分の境遇を幸せに思う。

 卒部試合、みんなの後方で控えめに笑う吉岡を見た。色々な個性が一つになったから、明治は殻を破れたのだなあ。しみじみと、そう思った。

※加筆しました(2月8日15:19)
※冒頭マネージャーのお名前に誤りがありました。 正しくは古岡奈緒さんでした。申し訳ございません。お詫びして訂正いたします(2月8日17:41)


これまで積み重ねた日々の結晶。前列左が吉岡大貴(撮影:松本かおり)
野村周平
【筆者プロフィール】野村周平( のむら・しゅうへい )
1980年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、朝日新聞入社。大阪スポーツ部、岡山総局、大阪スポーツ部、東京スポーツ部、東京社会部を経て、2018年1月より東京スポーツ部。ラグビーワールドカップ2011年大会、2015年大会、そして2016年リオ・オリンピックなどを取材。自身は中1時にラグビーを始め大学までプレー。ポジションはFL。

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