本郷コーチはラグビー担当ディレクター。ジェイ・スポーツの折山典弘さん。
今大会で8年ぶりの花園となった本郷は、尾道の圧倒的なディフェンスの前に持ち味を出せなかった。12-40で涙を呑んだ。
「本郷は中学時代に全国大会で上位入賞したメンバーが多く、ポテンシャルでは負けていなかったと思います。尾道さんの前に出るディフェンスへの対策も十分考えてきました」
「しかし、尾道さんのディフェンスを頭では分かっていても、花園で体感するプレッシャーは、頭で考えていたものとはまったく違っていたようです」
尾道のディフェンススピードは今大会屈指だった。
元NO8の尾道・FB高武俊輔キャプテンは、本郷戦のディフェンスを振り返って「一人ひとりが責任感をもって身体を張れるチーム。準備してきたものが全部出ました」。会心のディフェンスだった。
折山さんの悔恨は、花園前に尾道レベルのディフェンスを体感させてあげられなかったこと。そして、花園の怖さを伝えきれなかったことだ。
自身が高校3年時の第70回大会では、花園前に強豪・熊谷工業(埼玉)を下したため、一躍優勝候補に推された。しかし慢心が影響したのか、初戦で大津(山口)に9-13で負けた。
そして大会前に勝った熊谷工業は、第70回大会の覇者になった。俺たちはもっと上へ行けたのではないか――。
折山さんは花園に永遠に取り戻せない悔いを残している。
「花園では何が起こるか分かりません。そうした経験もしっかり伝えてあげられなかったことが悔やまれます。我々OBコーチのミスだと思っています」
今後も母校でのコーチは続けていく。
もちろんJ SPORTSのラグビー担当という強みも活かしていきたい。
「ジェイ・スポーツでは、日本代表からトップリーグ、海外のラグビーを担当しているので、参考になるプレーや戦略がいくらでもある環境にあります。これをもっと活かして、本郷メンバーの向上に役立てていきたいと思います」
ラグビーと一心同体の折山さんは、きっとこの瞬間もラグビーのことを考えている。
(文/多羅正崇)