国内 2019.01.11

明大4年・小宮カズミ、日本一目指す同志と「楽しもう」。

[ 向 風見也 ]
明大4年・小宮カズミ、日本一目指す同志と「楽しもう」。
明大LOの小宮カズミ。大学選手権決勝はベンチで待機する(撮影:向 風見也)

 明大ラグビー部の4年生は12月14日、東京・八幡山の寮の近くで決起集会をおこなった。

 12日前までの関東大学対抗戦Aでは、9年連続日本一の帝京大に勝利しながら5勝2敗で3位。大学選手権では1、2位チームが22日の準々決勝から登場するのに対し、レギュレーション上4位扱いとなった明大は16日の3回戦から挑むこととなり、福田健太主将らは重圧を感じていた。

 大型公衆浴場で裸になり、中華料理店で談笑する。就職活動のため開始に間に合わなかった部員が遅れて合流したあたりで、話は本題に移る。チームの進む道についてだ。「メンバーに入れなくても、チームのためにやれることはやりたい」。普段はあまり話さない控え選手も、クラブを思う言葉を口にした。

 なかでも福田がよく覚えているのは、小宮カズミの一言だった。

「明大というブランド、ファンの皆さんからの期待、プレッシャー…。いろいろなことはあるけれど、そんななかでも楽しまなかったらいいプレーはできないんじゃない? ラグビーを始めたきっかけを思い出して、もう一回楽しもう。そうしたら、絶対に勝てるから」

 確かに俺たちは、22年ぶり13度目の学生王者となることを目指すあまりに大事なことを忘れていたのではないか。小宮の言葉に触れ、福田はそう再確認した。

 同じように感銘を受けた1人は、小宮とLOのポジションを争ってきた土井暉仁だ。幼少期は海外にいた小宮を「あまり日本にいなかった分、(気持ちを)どんな言葉で表現したらいいかわからないこともあると思うんです」とおもんばかっていただけに、その簡潔な意思表明が心に響いたという。

「僕らが日本一、日本一と言っているなか、外国人らしく『気負わず!』のような感じでした。言われてみたら、そうだなと」

 当の本人は、こう言葉を足す。

「どの選手でも、もともとは楽しいからラグビーをやっていると思うんです。ただあの時は、責任感で硬くなっちゃっていたから…」

 アメリカ人のウィリアム・オルジェンさん、章子さんとの間に生まれた。ファーストネームは、母方の祖父で元ラグビーマンの小宮一己さんに由来する。

 さまざまなスポーツに親しむなかで少年がラグビーを始めたのは、14歳の頃だった。ロサンゼルス近郊のバックベイというクラブに通う。高校1年時の10月に来日し、東京・目黒学院高で競技を続ける。在米時はカズミ・オルジェンと名乗ったが、この国では母方の旧姓を用いて小宮カズミとして暮らす。

 日本の部活は、トレーニングがきつかった。しかし、「本当に試合に出たければそこにフィットしなければいけない。自分のペースを変えなきゃ」。郷に入っては郷に従え、である。高校在学中に明大のセレクションを受け、2015年から八幡山で汗を流す。

「いまの4年生は皆、仲がいい。楽しい時も苦しい時も、いまの4年生がいたからここまで来られた」

 あの日の集まりは、確かにチームを結束させた。土井によれば、「いい意味での楽しい空気があります。練習では緊張感もありながら、いいプレーが出たら皆で笑う」。引き締まっているのにどこか穏やかな空気に包まれるなか、チームは次々と勝ち進む。

 2季連続で進んだ決勝では、春、夏に練習試合をして2連敗した天理大とぶつかる。小宮はエンジョイファーストの態度を保ちながら、負けじ魂を胸に秘める。

「僕の言ったことだけでチームが変わったとは思ってないです。ただ、チームの雰囲気は確実によくなった。今年1回も勝てていない相手にここで負けるわけにはいかない。負けたら、一番、悔しいし、自分が許せなくなる。いいタックル、いいボールキャリー、いいラインアウトを見せたいです」

 1月12日、会場の東京・秩父宮ラグビー場では、メンバー外となった土井が他の同級生とともに出場組のウォーミングアップをサポート。一方で小宮は背番号19をつけ、ベンチから出番を伺う。

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