国内 2018.11.22

自己分析でラグビーが上手に。慶大の川合「小さい」を武器に早慶戦も暴れる。

自己分析でラグビーが上手に。慶大の川合「小さい」を武器に早慶戦も暴れる。
明治戦で活躍し慶應勝利に貢献した川合秀和(撮影:松本かおり)
 あなたの強みは何ですか。あなたの特徴はどこにありますか。慶大3年の川合秀和が自分に問いかけた。
 結論。
「意外と、自分を知らなかった」
 就職試験対策ではなく、ラグビーの話だ。日本最古豪でもある母校のクラブでやや不調に陥ったこの春、改めて自分の力を発揮する方法を考え直した。出場した試合映像を見返したなかで気づいたのが、「意外と、自分を知らなかった」という事実だった。
 以後、知らなかった「自分」の要素を棚卸し。いまの市場で「自分」が強みを出せそうなシチュエーションも想定し直した。
 川合は相手と激しくぶつかり合うFLのポジションに入るが、身長171センチ、体重86キロと決して大柄ではない。ボールを持って走るのが好きな「自分」のことはもともと知っていたが、大男の揃う大学ラグビー界で「自分」のよさを発揮するには事前学習が必要だと再確認したようだ。
「去年はブースター(リザーブ)という立ち位置でアタックが期待されていて、その部分では頑張ろうと思っていました。ただ今年は、自分をもっと知らなきゃいけないなと思いました。もっと試合を見て、相手も自分も分析して、どこに(自分が突破できる)スペースがあるのかを考えるようにはなりました」
 秋に入ると、加盟する関東大学対抗戦Aで好調をキープする。例えば9月30日、東京・江戸川陸上競技場での筑波大戦。相手防御の死角へ駆け込み、何度もビッグゲインを決める。2トライ奪取で35−24と勝利し、マン・オブ・ザ・マッチに輝いた。
 鍛えた観察眼がより活きたのは、11月4日の東京・秩父宮ラグビー場だ。
 そこまで全勝の4戦全勝の明大に28−24で勝ったのだが、川合はチームの看板たる防御で小さな「自分」を活かす。低いタックルを放ち、大型選手をなぎ倒す。接点上の相手の懐へ飛び込み、ボールを取る。
 攻めては前半39分、一時勝ち越しのトライに独創性をにじませた。敵陣ゴール前中央の接点の脇でボールを持つや、タックルしてくる自身より大きな選手の真上をダイブ。直後のゴール成功で21−12と点差を広げた。小さな選手の大きな選手の防御への対処法としては、やや異例に映った。もっとも本人としては、それが唯一の正解だった。
「メイジは下に飛び込んでくる。そのスペースを自分の判断で狙いました」
 試合中、明大の選手がゴールラインの前ではロータックルを放つと気づいていた。だから自然な流れで、「その上」を狙えたのである。普段から「自分」と「相手」との関係性を見定めてきた結果でもあろう。川合は改めて言った。
「いままでは小さいから…といろいろ考えることがあったんですけど、今年はそれを武器にしてどう試合に挑むのかを考えています。スペースを見たり、自分にしかできないプレーが何かを研究したり。それを試合で出すことを意識づけています」
 対抗戦の戦績を4勝1敗とした慶大は11月23日、早大との6戦目に挑む。早慶戦と言われる今度の伝統の一戦、さらには12月から参戦の全国大学選手権に向け、川合は「強みは最大限に発揮する。トライもそうですが、チームを勢いづけるプレーがしたい」。自己分析の技法を駆使し、「自分」の強みを「相手」の弱みにぶつけたい。
(文:向 風見也)

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