国内 2018.10.06

浅原拓真、路上事故後初の実戦。「申し訳ない。謝り切れない」

浅原拓真、路上事故後初の実戦。「申し訳ない。謝り切れない」
先発したヤマハ発動機戦でひたむきにプレーした東芝の浅原拓真(撮影:長尾亜紀)
 東芝の瀬川智広監督は、勝負を語る前に謝罪した。
「まずはじめに、今回はグラウンド以外の件でお騒がせして申し訳なく思っています」
 10月6日、静岡・ヤマハスタジアム。国内最高峰トップリーグのホワイトカンファレンス第5節の後の、公式会見でのことだ。試合は対するヤマハの防御やスクラムに手を焼き、7−27で落としていた。
 さかのぼって9月23日未明、所属選手で日本代表PRの浅原拓真の事故が発生した。飲酒後に路上で居眠りをしていた浅原が車にひかれ、チームメイトが車体を持ち上げるなどして救出。下敷きになった本人はほぼ無傷だったが、翌日から和歌山県であった日本代表候補合宿は辞退する。
 瀬川監督がヤマハ戦の直後に話したのは、その件についてだった。この日は「東芝らしい試合をして、ラグビーをする意味を体現しよう」と意気込んでいたとも続けた。先発SHの小川高廣も言う。
「信頼を行動で取りに行かなくてはいけなかった。そういう話は選手内で出ていました」
 コンディションが心配された浅原は、スターターとして40分間、プレーした。起用への思いを聞かれた瀬川監督は、「『いろんな人にご迷惑をかけた』という(検査入院後の本人からの)謝罪が僕の方にもありました」とし、こう続ける。
「僕にもいろいろな思いはありましたが、本人から『怪我は大丈夫。もしヤマハ戦に出していただけるのであれば頑張りたい』と。(周囲からも)『ご迷惑をかけた方にもしっかりと謝罪をして、そのなかで頑張れ、もう一回ラグビーをしっかりやれ』という声もいただきました。大きな騒ぎになっていたので、彼のなかでも自分が出るべきなのかと迷っている部分はありました。ただ最終的には、僕の判断で(出場を)決めました」
 背番号3をつけた浅原は、会見後の取材エリアにも登場する。普段は明るいムードメーカーだが、この日ばかりは記者団やテレビカメラの前で両手を前に揃える。神妙な顔つきで、「申し訳ない、の一言。謝り切れない」と頭を下げた。
 今回の件とは関係なく、10月14日からの代表合宿やツアーには帯同することとなっている。消え入るような声で、謝辞を述べる。
「こんな大問題を起こしてしまったにもかかわらず、ジェイミー(・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ)をはじめスタッフの方々に選んでいただいて、感謝しています。自分の失態で日本代表という最高峰に…。申し訳ないです」
 ちなみにこの件は、浅原が不在だった和歌山での日本代表候補合宿中も選手間で話題となった。東芝のFLで日本代表主将でもあるリーチ マイケルは、「ナショナルチームのメンバーのあるべき態度」という話題にこう応じた。
「(選手間でも)ずっと前からそういう話はしていたけど、こういうことが起きてしまったことで、改めて代表選手としての自覚を持って行動するように、と。注目度も上がっているから」
 ホワイトカンファレンス5位に順位を下げた東芝は13日、福島・いわきグリーンフィールドでクボタとの第6節に挑む。20日の第7節(対ホンダ/三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 サッカー・ラグビー場)では、代表組不参加との規定が生じる。そのため浅原が今季のトップリーグ前半節での出場を目指せるのは、次戦が最後となる。
(文:向 風見也)

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