国内 2018.09.23

身長168センチにしかできないことは何だ。東海大・深見瑠希の独自性。

身長168センチにしかできないことは何だ。東海大・深見瑠希の独自性。
ボールを持って力強く突進する東海大の深見瑠希(撮影:榎本芳夫)
 ランナーに刺さる。起き上がる。そしてここからが重要なのだが、目の前の接点からかなり離れた区画まで走り、防御の穴を未然に防ぐ。身長168センチ、体重86キロと小柄な東海大のFL、深見瑠希は、サイズの差を運動量でカバーする。
「それしかできないので。自分みたいな身体の小さい人間は動いて、ディフェンスの枚数を増やしていきたいなと思って。むしろ、それができないと。せっかくチームのために試合に出ているので」
 9月16日、長野Uスタジアム。加盟する関東大学リーグ戦1部の今季初戦で、拓大を47−7と制した。2年ぶりの優勝や初めての大学日本一を狙うチームにとって、攻め込むさなかのミスなど悔やまれる点も多いだろう。最上級生の深見は、かような事実を踏まえたうえで前向きに総括した。
「内容は別として、過去にリーグ戦を経験しているメンバーが新しい選手に気を遣いながらできたことはよかったです」
 成城学園中でラグビーを始めた。昨季まで日体大にいた兄の柊真も同じ場所を卒業したが、自身は神奈川DAGSラグビースクールでもプレー。兄と同じ國學院久我山高へは進まず、東海大相模高に進んだ。両親から「あなたは新たな環境に身を置きなさい」と勧められたからだ。
 エスカレーター式に上がった東海大は、妥協なきフィジカル強化で知られるクラブ。深見も入学時はその迫力に衝撃を受け、2年目のシーズンは首の頸椎の手術でほぼ棒に振った。
 もっともこの期間を、転機に変える。落ち着いて自分の立ち位置を見直したのだ。木村季由監督に「小さい奴にしか生きられない道がある」と背中を押されたことで、「それがすべてじゃ、ないんだな」。パワフルさを前面に押し出すクラブでも、パワフルさ以外の強みを持ったFWは必要とされるはずだ。そう思い、いまのスタイルを追い求めようと決めた。最終学年を迎えたいまも、刺さって、刺さって、走り回る選手を目指している。
「1年生の頃は両親からもCチームに入るのが目標と言われていました。そんななか仲間の鼓舞、きつい言葉などももらって、いまチャンスをいただいて、出られています」
 拓大戦では、味方の突破役にぴったりとくっつくサポート、防御の穴のカバーリングなどでも光った。指揮官から着想を得た独自の道を突き詰めた結果、身体の大きなCTBのアタアタ・モエアキオラ主将にも「ワークレートが高い。BKのところまでカバーしてくれる」と一目を置かれている。
 23日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で日大を迎え撃つ。今春は肩にメスを入れ、「大学生活の半分くらいはけがです」。満身創痍とあって、トップレベルでのプレーは今季限りと考えている。
「とにかく悔いが残らないシーズンにしたいです」
(文:向 風見也)

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