国内
2018.09.02
姫野、悔し涙…。3万人が興奮した死闘はサントリーがトヨタに劇的逆転勝利!
身体を張り続けチームをけん引したトヨタの姫野和樹キャプテンだが、試合終了間際にチームの反則の繰り返しで自身が退出することとなり、痛恨の逆転負け。試合後、涙があふれた(撮影:早浪章弘)
日本最高峰リーグの戦いにふさわしい名勝負、死闘となった。
ジャパンラグビートップリーグ史上最多の観客3万1332人がつめかけた愛知・豊田スタジアムで、3連覇を狙うサントリーサンゴリアスがトヨタ自動車ヴェルブリッツとの今季第1戦を27−25で制した。優勝候補同士が激しくぶつかり合った戦いは、ホーンが鳴ったあとも続いて死力を尽くす89分間の熱闘となり、5点を追うサントリーが、FWが1人少なかったトヨタに対しスクラムで押し込みペナルティトライを獲得し、劇的な逆転勝ちとなった。
試合後、敗れたトヨタの姫野和樹キャプテンは、タオルで何度も何度もあふれる涙をぬぐっていた。
「最後の最後に僕がイエローでチームを窮地に立たせてしまった。残り3分、チームが見せてくれた姿を誇りに思う。あれは負けたけど、勝つチームの姿勢。このチームのキャプテンでよかった。この負けを忘れることなく、残りのトップリーグを戦い抜いて、サントリーとまた戦いたい」
レッドカンファレンス第1節、注目の一戦は、キックオフからしばらくスコアボードは動かなかった。
均衡を破ったのはサントリー。前半22分、ルーキーのCTB梶村祐介、世界的SOマット・ギタウの力強い走りなどで敵陣22メートルライン内に入ると、アドバンテージをもらい連続攻撃でゴールに迫り、新人PR堀越康介が突っ込んでゴールポストの根もとに押さえ、トライが認められた。
しかし、トヨタはリスタート後すぐにチャンスを作り、左へ展開したパスが大外のWTBヘンリー ジェイミーにつながり、赤いジャージーの背番号11がインゴールに飛び込んだ。さらに、リスタートのキックオフをサントリーが失敗してグラウンド中央のスクラムから攻めることになったトヨタは、右へ動き、SOライオネル・クロニエから内戻しのパスをもらったFBジオ・アプロンがブレイクスルー、ルーキーのWTB岡田優輝につながって連続トライとなった。
一方、流れを変えたいサントリーは31分、負傷したギタウに代わって途中出場のSO田村煕がPGを決め、10−12と2点差に詰めて前半を終えた。
しかし、地元ファンの大声援を受けたトヨタは後半早々、相手のパスが乱れてこぼれたボールをCTBイェーツ スティーブンが拾い、WTBヘンリーにつないでトライを奪った。ヘンリーは数分後、相手のカウンターアタックを止めるなど守りでも奮闘した。
50分(後半10分)には、タックルが危険だったと判断されたサントリーのNO8ショーン・マクマーンがレフリーから10分間の退出を命じられ、トヨタのペースでゲームは進んだ。PGで加点し、“挑戦者”のリードは10点となる。
トヨタは堅守も光り、国内トップレベルの攻撃力を持つサントリーを止め続け、58分には身体を張り続けていたFL姫野がまたもブレイクダウンでターンオーバー。攻めに転じて右へすばやくパスを回し、CTBイェーツが抜け約40メートル走り切り場内が沸いた。
10−25とされたサントリーは、62分にPGで12点差とすると、70分には懸命につないでSO田村がゴールランを割り、コンバージョンも成功で5点差に詰めた。
逃げ切りたいトヨタは78分、相手に連続攻撃を許して自陣深くまで攻め込まれたが、ルーキーのNO8吉田杏がブレイクダウンで絡み相手の反則を引き出す値千金のビッグプレー。勝利を引き寄せたかに思われた。
しかし、直後、トヨタはラインアウトを乱し、ボールは再びサントリーに。
試合時間の80分経過を報せるホーンが鳴ったあと、ゴール前で攻め続けるサントリーに対し、トヨタは懸命に耐えていたがチームの反則が重なり、キャプテンの姫野にイエローカードが出され数的不利となった。そして、熱闘は続き、88分を過ぎた頃、ゴール前のスクラムで押し込んだサントリーに対してトヨタのFWはまたも反則を犯してしまう。戸田京介レフリーはペナルティトライを宣告。そのまま7点が入り、劇的な逆転ゲームとなった。
勝ったサントリーだが、指揮官と主将は反省を口にした。
沢木敬介監督は、「スキルレベルがめちゃくちゃ低かった。心のどこかに隙があった。まだまだ丁寧さが足りない。こだわりながらやっていかないと」とコメント。流大キャプテンは、「前半、22メートルに入りながら獲りきれなかったのが反省。きつい選択をしないと、こういう展開になる。もっとチームにならないと。最後は日ごろの練習の成果だと思う」と語った。
そして、敗れたトヨタのジェイク・ホワイト監督は、「反則が多いのは、サントリーがそれだけプレッシャーをかけたから。さすがのチーム。勝ち癖を持っている。それでもうちは6人のルーキーを起用して彼らが活躍した。いまトップリーグで最も若いチーム。この負けで多くのことを学んだ」と話し、これからの戦いを見据えた。
開幕節に先発デビューで攻守に活躍したサントリーのルーキー、梶村祐介(撮影:早浪章弘)
豊田スタジアムに集まった31,332人の大観衆。日本最高峰の名勝負を観た(撮影:早浪章弘)