国内 2018.07.19

エディー・ジョーンズ前日本代表HC、大分でエネルギー溢れるラグビー教室。

エディー・ジョーンズ前日本代表HC、大分でエネルギー溢れるラグビー教室。
炎天下、熱血指導するエディー・ジョーンズ(撮影:Ko Kawaguchi)
 日本代表ヘッドコーチ時代から続く、ラグビーをプレーする少年・少女やコーチたちと自らの知識を共有する、エディー・ジョーンズ氏(現 イングランド代表ヘッドコーチ)のラグビークリニック。7月14日に大分市営陸上競技場でおこなわれた今回のクリニックには、九州各地から約100人のコーチと、30人の高校生ラガーが集まり、炎天下ながらエネルギー溢れる「ラグビー教室」が開催された。
 この日のプログラムは、競技場内の講義室でコーチを対象にした講義の後、ジョーンズ氏がグラウンドで高校生の選手を実際にコーチングするという流れでおこなわれた。
 コーチ陣への講義では、日本代表が2015年ワールドカップで戦った4試合を例に、格下の相手とは「セットピースを基盤とした、ストラクチャーされたゲームプラン」実行の有効性を説き、逆に格上の相手とは「ハイリスクでありながらも、アンストラクチャーなゲームプラン」を実行する必要性を説明。コーチ陣は自分のチームと相手チームのタイプに合わせてこうしたゲームモデルを作り、これを実行する為の準備が普段の練習になるべき、とした。
 グラウンドに出てからは、選手たちに「基本スキルをしっかりと身に付け、戦術的な動きも基本を忠実にこなす」というコンセプトを繰り返し説く。アタックにおいては、(1)ボールのアーリーキャッチ、(2)体をディフェンダーに正対させて走る、(3)パスの後のサポートランはボールキャリアーの複数パターンの動きに対応できる位置に付ける、という3つの基本スキルの重要性を、4対3などのドリルで説明。「こうしたドリルは、成功率が70%程度となる難易度にする」、「ボールキャリアーは対面するディフェンダーの目を見て、相手の動きをコントロールする」など、選手、コーチともに印象に残るような具体的なアドバイスが多数あった。
 ディフェンスにおいては、3人のユニットでタックラーの内側にはポーチャー(タックルを受けたボールキャリアーにジャッカルに行く役割)、外側にはアジャスター(密集に入らず、次のフェイズで密集横のスペースを埋める役割)を置くという基本的なディフェンス戦術を説明。しかし、この後におこなわれたミニゲームでは、アジャスターの役割が果たされていない場面が発生し、すかさずトライを奪われるというパターンが続発。名将が繰り返し説く基本の重要性が実戦形式の練習であぶり出され、選手、コーチともに真剣な眼差しでアドバイスを聞いていた。
 選手としてこの日のクリニックに参加した、大分工業の林遼平君は「基本プレーがまだしっかりできていない部分があったので、チームに帰ってからもっと精度を上げていきたい。それから、練習中は常にスイッチを入れた状態にしておかなければならない、と再確認した」と、エディー式の密度の高い練習に影響を受けた様子。
 コーチとして参加した、大分東明高校の溝口健太先生は、「非常に刺激を受けました。全てを一気に改善させる事は現実的ではなく、優先順位を付けて、できることから改善していこうというアプローチには感銘を受けました」とコメントした。
 以前から「ラグビーコーチのコーチング」という試みにやりがいを感じると話していたジョーンズ氏。来年のワールドカップで4試合が開催される大分の地で、地元のラグビー関係者に大いなる印象を残したラグビークリニックとなった。
(文:竹鼻智)

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講義での一言一句にも熱がこもっていた(撮影:Ko Kawaguchi)

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