海外 2018.02.24

病魔に勝って開幕戦のピッチへ。リアリイファノ、人の愛と友情をパワーに。

病魔に勝って開幕戦のピッチへ。リアリイファノ、人の愛と友情をパワーに。
秩父宮ラグビー場を駆けるクリスチャン・リアリイファノ。(撮影/松本かおり)
 自分自身のため。そして、仲間、同じ病に苦しむ人たちのために戦う。
 2月24日、サンウルブズと今季初戦を戦うブランビーズが、試合前日の練習をおこなった。昨季のオーストラリア・カンファレンス1位チーム。ワラビーズに選ばれている選手も多い強豪だ。
 同チームの10番を務めるのがクリスチャン・リアリイファノだ。
 豪州代表19キャップも持つテクニシャン。今季はLOサム・カーターとともに共同キャプテンを務める。仲間を信頼している。「(強い)セットピース見てほしい。それを基盤にアタッキングゲームを仕掛けます」と頭にあるイメージを口にした。
 開幕戦の舞台に立つのは2016年シーズン以来だ。
 同選手の開幕戦登場が2季ぶりとなるのは、病魔との闘いに挑んでいたからだ。
 2016年の夏だった。2か月前に第一子が誕生し、父親になったばかりだったリアリイファノは突然病気にかかり、検査を受けた。白血病と診断された。
 ニュージーランド、オークランドの出身。家族とオーストラリアのメルボルンに移住したのは7歳の時だ。高校時代から広く才能を認められ、18歳のときにブランビーズのアカデミーに加入。スーパーラグビーデビューは2008年だ。2013年にオーストラリア代表入り。チームマンとして信頼された。
 闘病中、病魔に襲われたリアリイファノは多くの支持者に支えられた。それは豪州ラグビー界だけではなかった。2016-2017シーズンのトップリーグではサントリーでプレーすることになっていたから、サンゴリアスの選手たちも激励のメッセージを送り、気持ちのやり取りは続いた。
 たくさんの愛を味方に生きたリアリイファノは、病に勝った。
 復活の第一歩は2017年6月だ。命にかかわる病魔と闘いながらも、ラグビー選手としての復活を目指し、トレーニングも重ねたリアリイファノは、シンガポールで開催されたアジア・パシフィックドラゴンズとの親善試合で、約11か月ぶりにフィールドに立った。
 同年7月21日には、地元キャンベラ・GIOスタジアムでのハリケーンズ戦でスーパーラグビーの舞台に復帰。その後、北半球と南半球の14チームが混在する『プロ14』のアルスターと5か月の短期契約でプレー。
 1月中旬にはキャンベラに戻り、今季開幕へ向けてトレーニングを重ねてきた。
 試合前日のリアリイファノは、落ち着いていた。
「わくわくしています。ブランビーズとして東京でサンウルブズと戦うのは初めて。ここからシーズンが始まる。楽しみです」
 試合に向けての展望については、こう話した。
「サンウルブズは新しい選手が多いだけでなく、コーチ陣もフレッシュ。そういう状況ですから、分析は難しかった。参考にできる試合がないわけですから、(首脳陣が同じ)日本代表の試合見て参考にしました。しかし大事なことは、(サンウルブズのことは深くはわからないので)自分たちのやるべきスタイルに集中することです」
 司令塔として、仲間の力を引き出す決意を示した。
 前日(22日)の練習ではサントリーのグラウンドを訪れ、サンゴリアスの選手やスタッフと触れ合う時間を得た。
「ここまでリカバリーするにあたって、多くの人に支えられました。日本のコミュニティーのサポートももらいました」
 同じ病に苦しむメッセージを。
 そう問われて言った。
「常にポジティブでいてほしい。サポートしてくれる人たちがきっといます。多くの愛も感じるでしょう。そして、自分がどうしたいのかを考えてください。立ち向かっていく力が出る。絶対に望みはある」
 自身がピッチで見せる一つひとつのプレーが、たくさんの人々に勇気を与えることを知っている。

PICK UP