国内
2018.01.05
不安なし。ただただ、キックオフが楽しみ。明治大学、決戦2日前の表情。
仲間との充実の日々を過ごす明大LO古川満主将。(撮影/松本かおり)
真紅の王者を率いるキャプテンの名がグラウンドに響いていた。
「ホリコシ! ホリコシ!」
決戦2日前(1月5日)、明治大学八幡山グラウンドにはいい空気が流れていた。
1月7日には帝京大学との大学選手権決勝を控えている。午前11時から約90分。チームは、今季やってきたことの確認をゆっくり、何度も繰り返していた。
冒頭のように、帝京大学を率いる堀越康介主将の名前が何度も響いたのはディフェンス練習の時だった。仮装敵となったBチームの攻撃が始まると、その名が多くの口から出た。
丹羽政彦監督が言う。
「帝京は攻撃からペースをつかむチーム。特にキャプテン、バイスキャプテン(尾?晟也)を動かすと勢いに乗ってくるので、マークすべき相手と考えています」
同監督は、「まず試合の入りが大事」と言った。
「そこで点を与えないこと」
だからといって、守りに入るわけではない。ボールを持ち続け、攻めて、攻めて、攻め続ける。
「守ろうとして勝てる相手ではありませんから」
準決勝の大東大戦先発メンバーから2番と3番を代えた(HO武井日向→朴成浩、PR祝原涼介→吉岡大貴)のも、セットプレーをより安定させ、反則なく最初から攻撃的に戦うためだ。
「ここまできたら、最後は諦めた方が負ける。相手どうのこうのではなく、1年間やってきたことを信じてやり切るだけ」
19年ぶりの決勝進出に、「強かった頃のならわしなどを忘れてしまっている」とおどけつつも、「選手たちはノッている感じ」と自信を見せた。
チームの先頭に立つLO古川満主将も決勝戦について、「やっとここまできた。ただ、ただ楽しみ」と話した。
「不安はまったくありません。これまでやって来たことを信じています。スキル的なことはやり切っているので、残り2日間は、自分たちの強みは何かをもう一度全員で認識する時間にしたいと思います」
その強みについて、「アタック」と言った。
「BKの展開力、決定力は学生ナンバーワンだと思っています。FWは体を当て続け、相手が嫌がることを80分やる。それを徹底したいと思います」
決戦が本当に楽しみなのだろう。瞳がキラキラしていた。
8連覇中の王者を率いる堀越主将は、桐蔭学園時代の同期。いまも会えば話すし、U20代表などでともに戦ったこともある。
「19年ぶりの決勝進出もそうですが、昔の仲間と戦うのも、純粋に嬉しいですね。やっと、(決勝で戦える)挑戦権を手にできました。チャレンジャーの気持ちで戦いたいと思っています」
「すべての局面でレベルが高い」と同期の手強さはよく知っている。その一方で、「以前は人前で話すときに、よくカンでいた愛されキャラクター」と笑う。
互いにすべてを出し切りあう好ゲームにしたい。勝って笑顔で試合後を迎えたい。
日本一愛されるチーム。キャプテンは、自分の胸の中にある明治大学ラグビー部について、そう話したことがある。
「それは、今シーズン中も感じました。対抗戦の途中、(副将の)梶村とファンクラブの方と食事をする機会があったのですが、その場でも『シーズンはまだまだ続く。頑張れ』とあたたかい声をかけてもらいました。試合前に校歌を歌うとき、スタンドで多くの人が立ち上がる姿が見えるときがあります。そういうときも嬉しくなるんですよね」
その人たちのためにも。仲間のためにも。そして自分のためにも。学生ラストゲームを絶対に笑って終えたい。
主将になったとき、「真の意味で全部員で戦えるチームにしたい」と目標を立てた同主将は、シーズンクライマックスまで戦い続けられている2017年度のチームを、「本当にひとつになれている」と胸を張る。
「勝っても負けても4年生にとっては最後の試合が決勝戦というのは最高だと思います。最後の最後までハングリーに戦いたい。チームは(関東大学)対抗戦で慶應、帝京に負けましたが、早明戦で自分たちの姿を思い出し、あらためて変われた。あの試合で勝ち切れたからこそ、いま、ここにいられると思っています」
キャプテンは、「あとは勝ってチャンピオンになるだけ。それが、このチームの最後の(完成形への)ワンピース」と言うと、仲間の待つ寮へ向かって笑顔で歩き始めた。