コラム
2017.07.04
関西大学ラグビー春季トーナメント、2年目の検証−続けることに意義がある−
関西大学春季トーナメントで優勝した京都産業大のCTB田畑凌(撮影:石井愛子)
関西における大学ラグビーの競技力向上をテーマに始まった「関西大学春季トーナメント」は今年2年目を迎えた。
7月2日、東大阪市の近畿大学グラウンドで決勝戦と3位決定戦があった。
決勝戦は京都産業が近畿に24−19で競り勝ち、2年連続の優勝を決めた。3位決定戦は天理が同志社を50−7の大差で降した。
この大会は今年、関西協会理事会で公式大会と認められる。昨年は準備不足から、試験的実施による非公式戦だった。
ファーストジャージーの着用は、前回大会同様に義務づけられた。
今年の大会には、Bリーグ上位の大阪体育と龍谷を加えた10チームが参加。昨秋のリーグ戦1、2位の天理と同志社がスーパーシードとして、準決勝から加わる変則トーナメントが導入された。昨年あった敗者戦と3位以外の順位決定戦はなくなった。
試合数の最多は4。前年3位の京都産業と同4位の近畿は、Bリーグ2校のためのチャレンジ的位置づけで、1回戦から戦った。関西学院、関西などが最少の1となった。
昨年はAリーグ8チームが3試合ずつ戦ったが、今年は試合結果で増減はあった。
同志社は2試合ともにBチーム(二軍)以下で臨んだ。
6月18日の初戦(準決勝)の京都産業戦は、立教との定期戦と重なったため、4年生中心のチームを東京に振り向けた。準決勝は19−66。続く天理戦も、ジャパンセブンズやU20日本代表候補合宿が重なったため、7−50と2試合連続で大敗する。
同志社は招待試合が多い。そこに、関西最多の7つの定期戦(早稲田、慶應、明治、立教、京都、立命館、関西学院)を組み込んだりしている。その人気の高さと定期戦の多さゆえに、今年も日程調整に苦労する。
今年度から就任した萩井好次監督は、東京の7人制大会には行かず、この東大阪の3位決定戦に顔を出した。
「同志社としてはこれまでの定期戦を優先せざるを得ない状況があります。ケガもある。その中での人選となると大変です。この大会が続くなら、チームの底上げをして、耐えうる戦力を整えないといけません」
ラグビーは定期戦スタートのため、80年や90年近く続く一戦の軽視は難しい。
この3位決定戦、同志社対天理は、1週間前の6月25日、京田辺で行われた同志社ラグビー祭のメインだった。
同志社は7−36で敗北する。
1週間で同じカードを2つするなら、前週の試合に3位決定戦をかぶせればいい、という声が外部にはあった。
春季大会の運営を担当する関西大学リーグ委員会の高見澤篤委員長(立命館GM)はそれができなかった理由を話す。
「すでに関西協会のホームページで試合の動画を配信することが決まっていました」
協会のこの大会にかける努力を知った2校は2週連続の同カードを引き受ける。
2試合目の決勝を戦った京都産業と近畿は、この春季大会に照準を定め、4試合すべてケガ人を除くベストメンバーで戦った。
昨年、大学選手権に出場できる3位を争った両チームはこの日も好ゲームを展開した。結果は1トライ差で京都産業が逃げ切る。
スクラムとモールを押しまくり、勝利に貢献した4年生PRの柴田知宏は右目に青あざを作りながら喜びを口にする。
「決勝は大事な試合です。自分としても絶対に出たかった。勝ててうれしいです」
近畿の神本健司チームディレクターは、5点差で推移する後半終了間際、叫んだ。
「いいっすね。この緊張感。これがラグビー」
手に汗握る熱戦だった。
高見澤委員長は満足そうだった。
「これこそが我々の狙っていたことです。お互いガチガチでやって、シビアに勝敗に固執する。そんなゲームを春に積み重ねていけば、関西の大学の競技力向上につながってくるはずです。こうなってほしかった」
表彰式では関西協会の坂田好弘会長名で、優勝した京都産業に、高見澤委員長の手から表彰状が手渡された。
観衆は入場無料も手伝ってのべ約1500人。西側の仮設スタンド前には座れなかった人々は地面に直接腰を下ろし観戦した。
スタンドにはパナソニック、神戸製鋼、東芝、豊田自動織機、三菱重工相模原、マツダなどトップリーグや下部のトップチャレンジの採用担当者も姿を見せた。
盛り上がりは確かにあった。
春季大会を「意義あること」と認めながらも、天理の小松節夫監督は改善点を挙げる。
「例えば、東海や九州のチャンピオンを入れられないか。あるいは関東のチームとの交流戦をできないか、とかいう思いはあります。春季大会の相手とは、公式戦にしなくても2校間の話し合いで試合が組める。でも、もし関東のチームとできたらありがたいし、大きい。みんなそこを目標にしているから」
関東には関西が手本とした春季大会がすでにあり、対抗戦、リーグ戦を混ぜ、3グレードに分け、それぞれリーグ戦形式で5試合ずつを戦う。小松の意見は多くの指導者が望んでいることでもあろう。しかしながら、現状でそこに食い込むのは難しい。
ただ、九州を含め西日本のチームに呼びかけることは高見澤委員長の頭の中にはある。
「東海や中国や四国のチームは同じ関西協会の下になるので、おもしろいかもしれない」
地域の活性化を促す一面も出てくる。
高見澤委員長は大会の格を上げるために副賞の導入も考えている。
「花園ラグビー場の改修が終わり、開幕戦がまた1個所開催になれば、春の優勝チームの試合をメイングラウンドの最終ゲームに持ってくることなんかもよいでしょう」
昨年、関西学院の大賀宏輝前監督は前年成績で決まっている秋の対戦カードを春季大会の結果で決めたり、優勝校に秋の公式戦のテレビ放映の権利を渡すなどを試案として挙げていた。
いずれにしても、委員会を中心に案を出し合い、チームは己の利害を一時棚上げして、歩み寄る姿勢が必要になってくる。
「それぞれチームの事情は異なります。そこに統一ルールを持ち込もうとするのだから、無理は承知の上です」
高見澤委員長は個別の実情を理解しながらも、リーグの強化、発展に目を向ける。
昨年度の第53回大学選手権では、天理と同志社が4強入り。2006年度、第43回大会の京都産業、大阪体育以来10大会ぶりに関西勢2校が準決勝に進出を果たした。
春季大会の一定の成果は出たと言えよう。
これをさらにつなげて行きたい。
(文:鎮 勝也)
関西大学春季トーナメントで3位だった天理大のLO中鹿駿(撮影:石井愛子)