国内 2017.06.04

流経大に大勝も、東海大・木村監督が「かみ合っていないところも」と話す理由。

流経大に大勝も、東海大・木村監督が「かみ合っていないところも」と話す理由。
東海大は8トライを奪って快勝。FWの圧力がBKを走らせた。
(撮影/谷本結利)
 全国大学選手権で昨シーズンまで2季連続準優勝の東海大は、どんな相手にも勝ち切る底力を身に付けようとしている。
 6月4日、関東大学春季大会Aグループの第4戦目では、同じ関東大学リーグ戦1部の流経大に50-22と大勝。大東大との最終戦(6月18日/東海大グラウンド)を残し、3勝1敗と勝ち越しを決めた。とはいえ陣営は、決して満足していなかった。
 東海大は前半6分、敵陣中盤でのハイパントの捕球から右へ展開。敵陣ゴール前まで進んで自軍ボールスクラムを得ると、FW8人がひとつの塊となって一気に押し込む。最後尾に入ったNO8の王野尚希は孤立も、味方が首尾よくパスをさばく。最後はFBの清水隆太郎がインゴールを割った(ゴール成功でスコアは7-0)。
 14-0で迎えた31分には、CTBの池田悠希が防御の裏へ抜け出る。左大外に立つWTBの平尾充識がボールを受け取り、最後は清水が2度目のフィニッシュを決めた。19-0と差を広げた。
 流経大ではCTBのムケケニエジ・タナカ・ブラントン、LOのタウムア・ナエアタが再三前進。留学生の推進力でしばし点差を詰めたが、「押されている時にひとつにまとまる、という部分は弱い」とNO8の大西樹主将は言う。スキッパーが「こっちがいい感じのプレーをしても、その後のセットプレー(スクラムなど)で(勢いに)乗られた」と悔やむ一方、要所で踏ん張ったのは東海大だった。
 後半2分、6分の連続トライなどで31-7と試合を決めると、終始優勢だったスクラムで魅す。
 14点差に迫られていた後半17分頃、敵陣22メートル線付近右の1本で相手の反則を誘う。さらに深い位置へ攻め込み、同ゴール前ほぼ中央での1本も制圧する。
 右PRの春名宏一は「斜めから組んでくる相手に付き合わず、真っ直ぐ組めたらもっと良かった」としながらも、「(FWの)8人でまとまれた」。押し切った先には、NO8の王野らの追加点が待っていた(38-17)。東海大は試合終了間際にも、相手ボールスクラムのターンオーバーからだめ押し点をマーク。27点差での勝利を決めた。
 もっとも勝者は、この日の出来に満足していない。
 春に日本代表入りを果たしたCTBの鹿尾貫太は、「要所、要所で後手に回る場面があった。改善しないと」。全員の倒れた直後の起き上がり(リロード)をもっと素早くすれば、この日のピンチは減っていたと言いたげだった。
「もっとリロードを早くしないと、今後は、勝ち切れないかな、と」
 木村季由監督が異を唱えたのは、プレーの選択についてだった。
 伝統的にフィジカリティを強化してきた東海大はこの時期、あえて防御の揃った場所へも真っ向勝負すべきだと唱えている。
 とはいえ、時間帯によっては自由に攻められたこの日は、タックラーをかわしながら展開するシーンも少なくなかった。
 
 猛攻のさなかにパスがタッチラインの外へ飛んだ瞬間もあり、ベンチに座るコーチ陣は「縦へ切れ!」と縦突進を求めていた。ヤグラの上で試合を観ていた指揮官も、前半、手前側に立っていたWTBの平尾に「やって来たことをやれ」とチーム宛の伝言を送った。
 春季大会での白星と同時に、求めていることがある。それは、冬の頂上決戦を制するための底力だ。難敵の堅い壁に打ち勝つには、愚直な衝突を重ねる時間帯も必要…。木村監督はそう考えている。
「前に出てくるディフェンスに対し、しっかり身体を当てること。そういう時間帯も、ゲームのなかでは大事じゃないですか。でも、誰かが相手のディフェンスに対して逃げるプレーをしてしまう。それに、周りが反応できなくなる。その彼は、アウト(外側)に踏んで勝負をしていると言うのだけど、それで相手のストロングショルダー(タックルを仕掛ける肩)にぶつかられているわけだから…。これを『判断』と言ってよしとすれば、何でもありになってしまう。(この時期は)輪郭をある程度は定めて選択肢をシンプルにしているのだけど…。いまは80分間を通してのゲーム運びについてはやって(着手して)いないのもあって、まだ、かみ合っていないところがある」
 
 進化も感じている。
 ファイナルと同カードだった5月28日の春季大会第3戦では、8連覇中の帝京大を相手に前半19点リードを奪うも逆転された(●28-31/山梨・中銀スタジアム)。この時は後半初頭の反則で流れを渡したが、今回の流経大戦では、主導権を保ったまま終盤戦を迎えられた。
 課題を修正しつつある点を踏まえ、木村監督はこうも話していた。
「後半のスタート10分はいつも課題だと言っていたのだけど、きょうはいままでよりは、まだ、ましかな、と。いまはメンバーが固定されているわけでもないし、いい経験を積む場でもある。(挙がった課題が選手に)響かないと、意味がないですけどね」
 一方、これで1勝3敗の流経大は、試合ごとにメンバーを入れ替えるなど試行錯誤を繰り返している。
 SOの東郷太朗丸らBK陣の主力が揃って卒業しているとあって、内山達二監督は「選手が抜けたポジションでチャレンジしていかないと。そのなかでも面白い若手が出ている」。これまでWTBやFBとして起用されてきた1年の中川彪流が、この日はSOで出場。控え組同士のBチームでは、ヴィリアメ・タカヤワがランスピードをアピールしていた。
 
 昨季のリーグ戦での直接対決は流経大が29-26で制しているが、今季の様相やいかに。
(文/向 風見也)

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