各国代表
2017.05.08
2度リードを許しても、松田力也はぐらつかない。背番号10でも持ち味を発揮
大学選手権8連覇中の帝京大で昨季まで司令塔のSOを務めてきた松田力也が、5月6日、日本代表としてのテストマッチ出場6試合目にして初めてSOとして先発フル出場。アジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)第3戦目で背番号10をつけ、香港代表との接戦を29−17で制した。
これまでFB、インサイドCTBとして代表ジャージィをまとってきた身長180センチ、体重90キロの23歳。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチにも「複数のポジションをこなせる選手はコーチとしてありがたい」と言われるなど、万能性を持ち味とする。もっとも、指揮官いわく「ベストポジションは10番」とのことだ。
この日はしばしば、敵陣に攻め入ってから相手の背後へキックを蹴り込む。「スマート」をキーワードにFW陣のエネルギーをコントロールする、チーム戦術を全うしたようだ。
本人の見解はこうだ。
「流れが悪くなったら蹴る、ということはジェイミーとも話していました。ボールが出てくるブレイクダウン(密集戦)にもプレッシャーがかかっていた。それではあまりいいアタックができないと判断して、裏へ蹴ってもう一度ディフェンスから…と考えていました」
すべきプレーと同時に、したいプレーも表現した。常々「強気のラン」を長所と語る松田は、キックオフ早々にハーフ線付近からのカウンターアタックで魅する。目の前の防御網を切り裂き、22メートル線付近まで到達。前半2分の先制トライをおぜん立てした。
「(人と人との)間が空いたら走ろう、と。それがトライにつながったのはポジティブによかったと思います」
この日は判断やボールの扱いでエラーが多発し、2度のリードを許していた。しかし、昨季まで所属先で勝ち続けてきた人は、さざ波の立つような試合展開にも動じなかった。
「やっているなかでもパニックにならず、いいマインドを持っていいプレーができていたと思います。内容はそんなに悪くなかったですし、そこは、よかったかなと。細かいミスはありましたけど、それは次に向けて修正できればいいので。よかったところと悪かったところを踏まえ、積み重ねていきたいです」
若手中心となる今回のチームでは、ARC第2戦目まで背番号10をつけた小倉順平、同級生でパナソニックのチームメイトである山沢拓也と切磋琢磨。万能性と鋭さと落ち着きで、ベストメンバーが組まれる6月の代表チームへも参入したい。
(文:向 風見也)