国内
2017.05.07
テビタ・タタフ、日本代表復帰へ意欲満々!「自分からアピールしていきたい」
なんで、選ばないのだろう。本人の近くにいる関係者は、口を揃えて言っていた。
現在、アジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)を戦っている日本代表に、テビタ・タタフをなぜ加えないのか、という意味である。
身長183センチ、体重110キロのタタフは、トンガからやって来た東海大3年のパワフルなFWだ。15歳で東京・目黒学院中に編入。この国の義務教育を受けていることから、大学卒業後の国内リーグでは同時出場は2名までという「外国人枠」ではなく、「日本人」としてプレーできるだろう。改めて、自らの特徴を日本語で語る。
「自分の強みはボールキャリー(突破)と、ディフェンスでのリロード(倒れた後の起き上がり)とジャッカル(接点で相手の球を奪うプレー)。それを、出したい」
タタフの務めるFW第3列のポジションには、サンウルブズの一員としてスーパーラグビーを戦う金正奎や松橋周平ら実力者が揃う。何より選手選考は、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの専権事項だ。それでも、昨春のARCで代表デビューを飾ったタタフの激しさを期待する声は多い。
5月6日、日本代表は東京・秩父宮ラグビー場でARC第3戦目に挑んだ。29−17で勝利も、香港代表に2度リードを許すなど密集戦で手を焼いたか。前年度に同じ相手を38−3、59−17で下していたタタフは、自分のいないジャパンの戦いをこう観ていたようだ。
「香港代表が、去年よりレベルアップしていると感じました」
自分もグラウンドに立ちたかったのではと聞かれ、笑みを浮かべていた。
「試合…出たかったです」
翌7日、東京・早大上井草グラウンド。関東大学春季大会Aグループの初戦に先発出場した。秋の関東大学リーグ戦1部や冬の大学選手権では初年度から活躍も、春季大会はこの日が初だった。
接点の周辺や攻撃ラインの外側で球をもらえば、相手をはじいてぐんぐん前に出る。全11本中2本のトライを記録した。守っては後半22分、自陣22メートル線付近右中間の接点へ身体をねじ込みジャッカルを決める。ここから東海大は速攻を仕掛け、FBの青木優がトライ。
結局、早大を67−29で撃破。タタフは例の場面を、「そこ(自らのターンオーバー)からチームのトライが決まった」と喜んだ。
「春、(日本では)初めてのプレー。いつも通り、思い切りやれました。次の試合でもいいパフォーマンスを出せるように、自分で考えてコンディションを整えたいです」
さかのぼって3月は、20歳以下日本代表候補が主体のジュニア・ジャパンに加わった。フィジー・スバでのパシフィック・チャレンジに挑み、環太平洋諸国の代表予備軍と激突。同大会初となる3戦中2勝の成績を残し、4チーム中2位に入った。
突進役を全うした本人は、オフ明け初の真剣勝負とあって「フィットネス(持久力)はなかった」と課題を口にしたが、「相手がでかいなか、自分のできる低いプレーをしました。自分のいいプレーだけを出して、チームにいいものをもたらしたいと思いました」とも続ける。遠藤哲ヘッドコーチには、本調子ではないなかでも爆発する姿を「もっとすごくなりますよ」と評価された。
昨季終盤から故障が重なった。ジュニア・ジャパンの遠征中の鼻の怪我が今度のジャパン落選につながったのではと、本人は考えている。いまは、ほぼ万全に近い状態のようだ。
日本代表は6月、ベストメンバーを編成してルーマニア代表やアイルランド代表とぶつかる。国の威信をかけた大一番に向け、タタフも選出を熱望する。
「自分と同じポジションは、人数(ライバル)が多い。そのなかでどれだけ自分がレベルアップしていけるか…。自分から、アピールしていきたいです」
東海大の木村季由監督いわく、「彼に限らずですが、最後までいいコンディションでできるようにしていきたい」。大学側が招集を断る可能性は、ほぼゼロだという。あとはタタフ自身が、春季大会でのパフォーマンスで訴えるほかない。
14日、明大との大会2戦目をおこなう(静岡・草薙球技場)。
(文:向 風見也)