国内 2017.01.29

どうする、ポーコック? サントリーのキーマンが語る、日本選手権決勝展望。

どうする、ポーコック? サントリーのキーマンが語る、日本選手権決勝展望。
サントリーのボールハンター、ジョージ・スミス。ポーコックとの激突に注目集まる(撮影:松本かおり)
 頂上決戦。就任1年目の沢木敬介監督は言った。
「局面、局面は厳しくなる。おそらくチャンスも数少ない。それをどうフィニッシュまで持っていけるかだと思います。どちらにも若い選手、経験を積んでいる選手がいる。ファイナルで、いかにプレーに一貫性を持てるか。リーダー陣が引っ張りながら、ゲームをコントロールできれば」
 今季の日本最高峰のラグビートップリーグ(TL)で全勝優勝を果たしたサントリーは、1月29日、日本選手権の決勝戦に挑む。東京・秩父宮ラグビー場で迎え撃つのは、大会2連覇を目指すパナソニックだ。
 27日、東京・サントリー府中スポーツセンター。WTBの中?隆彰は「トップリーグのチャンピオンになったことは忘れて、チャレンジする。今年やってきたことを出し切って、悔いのないようにしたいです」。今季のTLでは、トライ王とシーズンMVPを獲得。売り出し中の26歳のランナーだ。堅守速攻を打ち出すパナソニックからも、わずかな隙を突きたいという。
「パナソニックさんはディフェンスの組織をしっかりとさせて、ターンオーバー(攻守逆転)からのアタックを仕掛ける。僕らはそのディフェンスに負けないアタックをしていきたいです。(防御網が厚く、攻める)スペースがないように感じると思うのですが、そこで1人ひとりが(相手タックラーに)逃げずに、強く、当たる。そのなかで僕は、ミスマッチ(対面とのスピード勝負で優位に立てそうなシーン)を狙っていければ」
 日本代表でもあるFBの松島幸太朗は、攻撃時の注意点に「シンプルなミスをしないこと」を挙げる。ふいにボールを手渡した後の逆襲を警戒し、「こちらがミスをした時のリアクション(も意識したい)。向こうはカウンターも得意なので、それにどう対応できるか」と続ける。
「自分たちがフェーズを重ねるなか、いかにミスを少なくしてトライまで持っていけるか…」
 パナソニックは昨季まで、トップリーグで3連覇を成し遂げていた。サントリーは今季のTLでパナソニックを45−15で下しているが、それは9月17日の第4節でのことだ(秩父宮)。それ以降、先方は徐々に調子を上げている。後半戦から途中合流したオーストラリア代表FL/NO8のデービッド・ポーコックは、接点でのボール奪取が冴える。
「ポーコックが来たことによって、他の選手も積極的になったり、上手くなったところがある。ブレイクダウン(接点)へのサポートが遅いと相手のペースになるので、(接点へ入る)2人目、3人目(の動き)を速くしていきたいです」
 松島がこんな見立てを示せば、指揮官はこの1週間でのフォーカスポイントをこう明かした。
「向こうの3列(FLなど)には、ボールへ絡める選手が揃っている。(接点での)細かいスキルに関しては、この1週間、準備してきました」
 
 TLで9位だった前年度から、V字回復に成功。さまざまな手法で個々の「ラグビーナレッジ(理解度)」を高め、攻撃スタイルに深みをもたらした。
 春先は国際リーグ・スーパーラグビーのチームや強豪国代表を「仮想敵」と捉え、試合映像を分析し合うトレーニングをおこなった。この時期はオフの日も、グラウンド上で歩きながらの連携確認をした。SHの流大主将は言う。
「春、夏に関しては、ウォークスルーのような形で戦術を確認し合って…。これは、今年初めてやったことです。(休息日の確認作業とあって)強度はゼロに等しいなか、頭のなかを整理しました。それもあって、皆のやるべきことが明確になっていたと思います」
 フィジカリティ強化と平行して磨いた判断力をベースとし、常に複数の選択肢を持って攻撃を仕掛けた。沢木監督はこう話している。
「今年は『サントリーの形はこれだ!』というものが、いい意味でない。相手のディフェンスに的を絞らせないようなアタックをしていけると思います」
 プレーの起点であるセットプレー、自軍の守備について話すのは、ジョー・ウィーラーだ。
 入団1年目にしてベストフィフティーンに輝いた、身長200センチのニュージーランド人LO。2015年度はハイランダーズの一員としてスーパーラグビーを制している。過去の経験から、「セットプレーで優位に立てば試合を優位に進められる。それにディフェンスの強いチームは、ファイナルゲームで勝てる」とした。
「ファイナルの週は大好きです。パナソニックさんは、相手に取って不足はない。自分たちにとって、チャレンジになる」
 高揚感を露わにしていた。
(文:向 風見也)

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