国内 2017.01.21

「手を抜いたら恥」。母校・帝京大と戦うサントリー森川由起乙

「手を抜いたら恥」。母校・帝京大と戦うサントリー森川由起乙
日本選手権の帝京大戦で先発することになったPR森川由起乙(撮影:松本かおり)
 ラグビーの日本選手権は1月21日、大阪・東大阪市花園ラグビー場で開幕。大学選手権8連覇を達成した帝京大とぶつかるのは、国内最高峰トップリーグ(TL)で優勝したサントリーだ。
 就任1年目の沢木敬介監督は「日本選手権に出るチームとしてリスペクトし、100パーセント、スマッシュする」。体調管理の観点から先発をリーグ戦最終節から5名、入れ替えるも、各局面における厳しいプレーの徹底を誓う。
 一昨季、帝京大の副将を務めた森川由起乙は、サントリーの左PRとして先発。母校との戦いに向け、ただただ警戒する。最終学年時は、日本選手権の1回戦でTL10位だったNECに勝利。当時のチャレンジャー精神を思い返してか、大一番に臨む相手の意気込みを皮膚感覚でイメージできる。
「どれだけスコアが開いても、1人ひとりがあきらめない。そのベクトルが定まっている。こちらが気を抜いたら、怪我につながる。サントリーのプライドをぶつけたい。構えるというより、チャレンジをしたい」
 今季の公式戦先発は2度目。ルーキーイヤーの昨季はTLの7試合でスターターとなった森川だが、今季は2年先輩の石原慎太郎にその座を譲ってきた。「石原さんにあって僕に足りないものもわかっている」。来季以降も続く定位置争いに向け、静かに闘志を燃やす。スクラムワークを向上させ、機動力やスキルといった持ち味をアピールしたい。
 
 沢木監督いわく、今季のチームは「セットピースを武器にすると決めていた」。その「セットピース」の代表格たるスクラムについては、春に元日本代表コーチのマルク・ダルマゾ氏を招くなどして組み方を再構築した。
 TLが開幕すると、そのスクラムで存在感を示した石原が背番号1に定着。そんななかリザーブ席に座る森川は、もどかしい気持ちで練習に取り組んでいたという。
「頭では1番(左PR)のすべきことをわかっているのですが、身体がついてこれず…。求めと逆のことをしてしまって、上手くいくスクラムも上手くできなかったり…」
 もっともそこは、常勝集団のレギュラーを2年時からつかんだ実力者だ。2016年12月10日、TL第11節でスターター入りの機会を獲得。ようやくチャンスをつかんだところで、もやもやを晴らすきっかけをつかんだ。
 
 東京・秩父宮ラグビー場でコカ・コーラを48−12で下した80分間、またはその日までの約1週間のトレーニングを通し、「ひとつの壁は、破れたと思います」と感じたという。
「(コカ・コーラ戦での先発出場が決定的とされていた)火曜の練習の段階でも、納得のいくスクラムは組めていない。それでも、やるしかなくて。まず自信を持つ。そしてスタッフの方の支えもあって…。周りとコミュニケーションを取りながら、場面ごとにどうすべきかが身についてきた。自分がどういう姿勢を組めば3番(右PR)が楽か、などもわかってきた」
 春先には辛苦を、冬場にはかすかな充実を味わった森川は、「僕らは僕らとして、サントリーのプライドを持って戦う」と断言。クラブ内での立場を明確にするためにも、後輩たちを圧倒したい。
「帝京大を相手に手を抜くことは、僕らの恥でもある。照準を合わせてやっていきたいと思います」
(文:向 風見也)

PICK UP