海外 2016.12.14

「170センチ台は普通じゃだめ」。三村勇飛丸、サンウルブズ参戦への決意。

「170センチ台は普通じゃだめ」。三村勇飛丸、サンウルブズ参戦への決意。
サンウルブズスコッド発表会見で意気込みを語る三村勇飛丸(撮影:松本かおり)
 いつ誘われたかは「ちょっと、覚えてないですね」。返事を聞かれれば「断る理由がない」。会場の白いライトに顔中の傷を照らされた三村勇飛丸は、簡潔に答えていった。
 12月12日、国際リーグのスーパーラグビーへ参戦するサンウルブズが都内で会見を開いた。この日に発表された2017年度スコッド36名中6名が出席した。
 船のような名前のタックラーも、そのうちの1人。会見後に設けられた取材機会で、思いを発した。
「参戦できることに感謝したい。どのチームにも、自分よりレベルの高い選手がいるのは間違いないので」
 激しい肉弾戦に飛び込むFLとしては小柄な、身長178センチ、体重96キロの27歳。巨躯の下半身へ刺さるタックル、こぼれ球への反応で渋く光ってきた。2011年度からプレーしてきたヤマハでは、2013年から主将を務めている。
「その場、その場で挑戦することが全て。目の前のことにチャレンジするだけです」
 今年からスーパーラグビーに初参戦したサンウルブズの国内開催試合は、全て現地観戦した。
「最初は、海外の選手を生で観られることに自分の成長の余地があるんじゃないかな、と思って…。(自分もプレーをしたいという気持ちと)半々、くらいでした」
 ところが、足を運ぶほどに内なる闘志を燃やした。安藤泰洋、金正奎ら、自分と似た体形の日本人FLが戦っているのを観て、刺激を受けたのである。
「ちょっとプレーをしてみたい。でも年齢的にどうか…。それが正直な気持ちでした」
 そしていま、長所を認められ挑戦権を勝ち取った。
 年代別の代表選出経験はなかったが、今秋、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ率いる日本代表に加わった。「チャンスはいただいたけど、ラストチャンスだと思っている」。オールアウトを誓った。
 通算1勝3敗で終えた11月のツアーにあって、先発機会は11月5日のアルゼンチン代表戦のみ。東京・秩父宮ラグビー場で20−54と屈してからは、レギュラーの座をパナソニックの布巻峻介に譲った。
 あの時に何が必要だったのかは、自分でよくわかっている。国内のトップリーグでプレーするなか、その課題をクリアしたい。布巻がサンウルブズのスコッドから漏れたことを「驚き」としながら、自らの決意を明かす。
「やっぱり…。世界のラグビーでは、僕らみたいな身長170センチ台のFLが普通に試合に出て普通に終わってはだめ。身長が低い選手だからこそできる、存在感のあるプレーをもっと、もっと、しないと。タックル自体は通用していたと思うんですけど、ワークレートの部分(仕事量の不足)が、自分のあまり試合に出られなかった大きな理由だと思います。これからは国内で結果を残すと同時に、足りない部分を埋めていきたいです」
 
 光に照らされた傷跡は、何百発、何千発ものタックルで作った勲章である。相手の突破役を止めるのが仕事だと自覚するファイターは、スーパーラグビーで対戦したい選手にサム・ケインを挙げた。身長189センチ、体重103キロのニュージーランド代表FLだ。
 日本代表主将を務めた身長190センチ、体重105キロのリーチ マイケルも、このケインをFLの手本だと話す。サンウルブズは4月29日、ケインとリーチのいるチーフスと第10節をおこなう予定だ。
 敵地ハミルトンでの一戦。「Yuhimaru」は出番を勝ち取り、驚異的なワークレートを示せるだろうか。
(文:向 風見也)

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