国内 2016.10.01

昨季王者パナソニック、序盤から組織力冴え3勝目。NTTコムは終盤追い上げ

昨季王者パナソニック、序盤から組織力冴え3勝目。NTTコムは終盤追い上げ
NTTコムのWTB諸葛彬にタックルするパナソニックのSOベリック・バーンズ(撮影:松本かおり)
<ジャパンラグビートップリーグ 2016−17 第5節>
パナソニック 42−14 NTTコム
(2016年9月30日/東京・秩父宮ラグビー場)
 3連覇中も今年度は開幕から2勝2敗と苦しんでいたパナソニックは、序盤から効果的に組織を運用した。
 序盤。自陣の深い位置からSOベリック・バーンズが、敵陣22メートルエリア右へキックを落とす。続いて、対するNTTコムのラインアウトで攻撃権を奪い返す。ゴールポスト正面までパスをつなぎ、相手の反則を誘発する。前半7分、SOバーンズがペナルティゴールを決めた。
 オーストラリア代表経験者のSOバーンズが、他選手との連動でペースをつかんだ。
 6−0としていた12分、自陣中盤左の相手ボールスクラムの場面だ。
 味方と2人で、パスの起点のSO小倉順平へ猛ダッシュで飛びかかる。ボールを乱す。
 さらに13−0とリードを広げていた26分には、敵陣中盤右のスクラムから追加点を決める。
 CTB林泰基らがおとりの動きで敵を引きつけるなか、大外へ走りつつSH田中史朗の球をもらう。防御網を破り、接点を作る。
 ここを援護したのはFL布巻峻介。
「ただ球がでればいい、ではなく、精神的にダメージを与える」
 邪魔に入った敵のFWに身体をぶつけ、動きを封じる。
 そのすぐ脇にできた走路を、SH田中が駆け上がる。
 LOヒーナン ダニエル、トライ。
 SOバーンズのゴール成功で20−0とした。
 前節を終えてから約2週間の歩みを踏まえ、PR稲垣啓太は語る。
「もう1度、チーム戦法を信じて、理解度を高めようとしていた」
 後半もしばしパナソニックペースが続いたが、スコアが35−0となってからは潮目が変わる。
 NTTコムが、得意の連続攻撃を機能させたのだ。左右にパスを振り、FB羽野一志ら好ランナーを走らせる。ひとつ突破口を作れば、用意された陣形のもと相手守備網のわずかな穴に大きな亀裂を入れられた。
 20分、35−7。32分、35−14。
 その間のパナソニックには混乱の匂いが漂ったか。初失点の際には、FB笹倉康誉が危険なタックルにより一時退場処分を受けた。リーダー格のPR稲垣は、こう自戒を込める。
「流れを引き戻したいからとビッグプレーを…というミスが何個かありました。振ってくるのに対し、なぜディフェンス(の左右幅)が狭いか。そうした状況を理解してのコミュニケーションがまだ甘かったです」
 前年度8位のNTTコムは、今季4勝目を狙っていた。SOバーンズらの「試合巧者ぶり」に舌を巻いたFL栗原大介ゲーム主将だったが、「失望はしていない」とのことだ。
 一方、結果的には白星を挙げたWTB北川智規ゲーム主将は、勝って反省との構えだ。
「相手をゲームに参加をさせてしまう、苦しい時間帯があった。ただ、『こうすれば勝てる』という意識は共有できた。ラグビーは陣取りゲーム。どう自陣を脱出するかをリーダー同士で話し合った結果です」
 リーグ戦の勝ち点のみで王座が決まる2016年度シーズンにあって、2チームが開幕4連勝中だ。この夜を過ごした両者は、ただただ内容にこだわり結果を残し続けるほかない。
(文:向 風見也)

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