国内 2016.09.11

熱戦。観衆1万超。はがれた芝。巨大スタジアムで東芝×キヤノン開催。

熱戦。観衆1万超。はがれた芝。巨大スタジアムで東芝×キヤノン開催。
何度もラインブレイクした東芝SO田村熙。(撮影/松本かおり)

 7万2327人収容の巨大スタジアム。スタンドの埋まり具合は7分の1ほどだったか。
 横浜市の日産スタジアムで、初めてトップリーグの試合がおこなわれた。9月10日、18時キックオフ。その4分後には東芝のルーキーWTB松岡久善がインゴールに駆け込んで、記念すべき試合のファーストトライスコアラーとなった。立ち上がり輪制した赤いジャージーは、21-19で試合にも勝った。

 2019年に開催されるワールドカップでファイナルの舞台となる場所。1万1223人のファンは最初と最後に沸いた。
 前半4分の松岡の先制トライは見事だった。右サイド寄りのスクラムから左に展開した東芝は、センタークラッシュからワイドにボールを動かす。SO田村熙のパスでスピードに乗ったBKラインはアウトサイドを攻略し、FBコンラッド・バンワイクが走り、開幕から活躍を続ける摂南大卒のルーキーフィニッシャーへ。インゴールへ躍り込んだ(松岡はこれで今季3戦で3トライ目)。
 東芝はその後もフィジカルに戦い、スキを突いては田村が前へ走った。キヤノンのHO庭井祐輔主将は、「フィジカルな相手に真っ向勝負を挑もうと話し、戦いました。それであちらのペースにはまってしまった」と悔やんだ。

 それでも試合は拮抗した。前半を終えて4点差(東芝 10-6 キヤノン)。後半20分でも差は変わらず(13-9)。キヤノンが積み上げてきたセットプレーで対抗し、試合の中で戦い方も修正したからだ。SOジャンクロード・ルースのキック力を活かしてフィールドポジションをとり、DGやPGでジリジリと迫った。
 後半23分にはPKで東芝陣深くに入ったキヤノンは、自信のあるラインアウトからモールを組みトライ。16-13と、この試合で初めてリードを奪った。さらに後半30分にはPGで差を広げた。試合後に東芝の冨岡鉄平監督が敗者を称え、「80分間集中力が途切れることはなかった。上位チームの仲間入りをしていると思う」と言うのも不思議ではなかった。

 沸いた。地元行政の協力もあって集まった1万を超える観衆の中には、初めてラグビーを観るファンもいただろう。そんな人たちにも、ピッチの熱はきっと伝わった。残り10分で6点を追う東芝の気迫と、勝ち切ろうとするキヤノンの意地の激突にスタンドからは大きな声援が飛んだ。
 残り7分、東芝はスクラからの右展開をWTB豊島翔平が仕上げて1点差に詰め寄ると、後半38分に巡ってきたキヤノンボールのスクラムに力を結集させた。ぐいっと押し込みターンオーバー。そして波状攻撃を続けた。相手の反則を誘う。SH小川高廣が逆転のPGを決めて勝利を呼び込んだ。
 殊勲のスクラム時の様子をゲームキャプテン、リーチ マイケルがこう振り返った。
「知念(PR)の目がギラギラしていました。廉くん(HO村山)も、押せる、と」

 満員の巨大スタジアムが埋まる光景は見られなかったが、あらたなファンを楽しませるパフォーマンスは披露できた。試合前からスタジアムツアーやトークショーなどのイベントも開催された。日本開催のワールドカップまで3年。同様の準備と仕掛けを全国各地で続けなければならない。
 ピッチの状態について、キヤノンのHO庭井主将はスクラム時の体感をこう話した。
「すごくきれいな芝でした。ただ根付いていないというか、スクラムを組むと(そのあたりの)地面全体が(ずれて)持っていかれる感じでした。ラグビー仕様にしてもらえたら嬉しいですね」
 スタンドから選手たちまでの距離も遠かった。大型ビジョンも設置され間違いなくワールドクラスのスタジアムなのだが、ラグビーの世界のプレーヤー、ファンを満足させるには少し足りない。本番までに改良してもらえる可能性はあるのだろうか。
 

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