国内 2016.09.10

打ち合い&我慢比べを経て。勝ったNTTコムと敗れたNEC、ともに課題語る

打ち合い&我慢比べを経て。勝ったNTTコムと敗れたNEC、ともに課題語る
NEC戦で好走を連発したNTTコムのブラッキン・カラウリアヘンリー(撮影:松本かおり)
<ジャパンラグビートップリーグ 2016−17 第3節>
NTTコム 33−15 NEC
(2016年9月9日/東京・秩父宮ラグビー場)
 ひらすら打ち合った前半、両軍通じて最初のトライを奪ったのはNECだった。
 敵陣の深い位置で攻撃権を得ると、ランナーは低い前傾姿勢で球を確保。日本代表のSH茂野海人は「チーム全体の観ている画が一緒だった」と、首尾よく左右へ球を散らす。
 ピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)を迎え低迷脱却を図るクラブにあって「強引に(周りに)攻めのコールをさせるようなオプションにしました」とは、こちらもジャパンのSO田村優。最後はこの司令塔が、ロングパスを放った味方の援護につき、トライする。前半5分だった。
 もっとも、ここで3−5とされたNTTコムも、攻め出したら止まらない。ロブ・ペニーHC体制下3季目で上位進出を伺う攻撃組織は、3−8とリードを広げられるや、一気に、火を噴いた。
 まずは16分。扇状の陣形を広げながら、密集近辺の走者がどんどん球を持ち出す。NECの足が後退するや、一転、大きな展開に舵を切る。敵陣22メートルエリア左中間をFB小川優輔が蹴破ると、左脇をPR上田竜太郎が、さらにその右脇をSH友井川拓ゲーム主将が並走。FL栗原大介が止めを刺した。鋭い仕掛けでも魅せたSO小倉順平もゴールを決め、10−8と勝ち越す。
 
 肝となったのは、続く24分から27分までの攻防か。
 グラウンド中盤右でNECの落球を拾ったNTTコムは、左へ展開。「我慢をしていればNECさんのディフェンスは、空く」と見込んでいたSH友井川が、接点付近の空洞を一気にえぐる。敵陣22メートルエリアでは左から右へパスが渡り、最後は、この夜ラインブレイク連発のCTBブラッキン・カラウリアヘンリーが飛ぶ。32分のSO小倉のペナルティゴールなどで、20−8とした。
 NECは37分、SO田村の接点際への好援護を交えた連続攻撃でWTB松浦康一のトライを奪取。ハーフタイムへ。しかしSH茂野は、ミスから失点した肝の場面を踏まえ、こんな課題を覚えることとなる。
「ウチは、ターンオーバー後のリアクションが遅いかな…」
 20−15のスコアで迎えた後半は、リードするNTTコムの攻めと守るNECの我慢比べとなる。NECはFL細田佳也いわく「最初はテンポよくやられていたけど、皆で話して修正した」と、2人がかりでのタックルの激しさを底上げした。
 もっとも、最後に寄り切ったのはNTTコムだった。
 26−15として迎えた32分、敵陣ゴール前左。NO8アマナキ・レレィ・マフィ、FB羽野一志が、ボールをはたきながら左へつなげるパスを繰り出す。NEC守備網の飛び出しをいなした。最後はWTB小泉将がだめを押し、FB羽野は笑った。
「ディフェンスは、見えてました」
 ノーサイド。敗れたSO田村は「60分以降は歯が立たなかった。(相手と)力の差はある」と、自軍の様子を潔く語る。かたや勝ったペニーHCも、好機を逸したように感じたためか「少し残念に思う場面もあった」と満足はしない。打ち合いと我慢比べが続いた80分に、両軍とも手厳しいレビューを下していた。
(文:向 風見也)

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