国内 2016.08.28

ハッティングも立川も出し切った。クボタ、昨季準優勝の東芝と激戦。

ハッティングも立川も出し切った。クボタ、昨季準優勝の東芝と激戦。
ラインアウトで競るクボタのグラント・ハッティング(撮影:松本かおり)
<ジャパンラグビートップリーグ 2016−17 第1節>
東芝 22−19 クボタ
(2016年8月27日/東京・秩父宮ラグビー場)
 昨季16チーム中12位のクボタでは、以前ブルズを率いスーパーラグビー優勝を経験したフラン・ルディケ新ヘッドコーチが整備に着手した。
 この夜も前年度準優勝の東芝を苦しめる。8点差を追う終盤、守備網との間合いを取って、攻めを織る。後半23分から出場した南アフリカ出身のSHルイ・シュラウダーが、老舗の花板みたく球をさばく。
 39分、敵陣22メートルエリア右でCTB立川理道主将が倒れながらインゴールへキックを転がす。対する元ニュージーランド代表のCTBリチャード・カフイがインゴールへ戻るも、先に弾道を押さえたのはクボタのWTB伊藤有司。22−19。迫った。
 ラストワンプレー。クボタはまだ攻める。自陣の深い位置から、小刻みに突破口をえぐる。
 敵陣まで入り込まれた東芝は、接点で笛を吹かれぬよう「刺さって倒して起き上がる。集散を意識」とNO8徳永祥尭。球際で反則を犯せば、少なくともペナルティゴールでの3失点で勝ちを失う。安全第一。
 ロスタイム。敵陣22メートル線付近に現れるは、八面六臂に動くFLグラント・ハッティングだ。気力を振り絞り、直進。が、落球した。
 その足元へは、東芝のNO8徳永が刺さっていた。
「気持ちです。東芝としての誇り、じゃないですが」
 ミスの連続ではなく、攻守逆転の連続で流れが切れない80分。先制したのはクボタだった。
 敵陣10メートル線付近左でのモールで、反則を誘う。風上でキック力を活かすSOルイ・フーシェが、ペナルティゴールで3−0とする。
 身長201センチのFLハッティングも暴れる。
 一進一退で10−11とクボタがリードする後半10分には、自陣中盤左で相手走者を引き倒し、起き、目の前のラック(密集)へ腕を伸ばす。
 捕まった東芝のSH小川高廣が「うちのラックが浅く(球の保護が薄く)て、プレッシャーを受けてしまった」と手元を乱す一方、FLハッティングはこうだ。
「タックルは、いい態度と気持ち。チームのストラクチャーを保つには、ワークレート(仕事量)は大事」
 変調は、クボタが10−14とリードを広げた12分以降に起きた。
 ここから、東芝のFLリーチ マイケルが登場。昨秋の日本代表主将だ。
「FWを落ち着かせる。敵陣に入ってトライを取る」
 タックルとランで前に出ると同時に、プレーの合間の声掛けで各選手の位置取りを整理する。引き締まった東芝は後半32分、CTBカフイのカットインなどを交えて敵陣深い位置へ侵入する。新人のSO田村煕のキックパスにCTB増田慶介が応じ、22−14とほぼ勝負をつけた。
「誰が観てもいい試合。それを勝ち切れなかったのは課題」とは、今春の日本代表で副将だったCTB立川主将。もっとも、追い上げで沸かせたのも事実だった。
「大きなミス。次、修正します」
 防御にラインアウトにと力を示したFLハッティング本人は、淡々とした風情だった。
 
 勝者に称えられた敗者がただ悔しがり、明日を見る。道は続く。
(文:向 風見也)

PICK UP