国内 2016.08.28

リコーが5年ぶりの開幕勝利。我慢が呼び込んだ3点差の死守。

リコーが5年ぶりの開幕勝利。我慢が呼び込んだ3点差の死守。
高い身体能力に加え、抜群のセンスを備え持つリコーのSH中村正寿(撮影:松本かおり)
 トップリーグ開幕節の8月27日、秩父宮でリコーブラックラムズがNECグリーンロケッツを23−20と破り、白星発進した。小雨が降ったり、止んだりのあいにくの空模様だったが、昨年の反省を踏まえ、春に取り組んだチームディフェンス、スクラムなど成果が見られた内容。修正すべき点も明確になり、昨年までとは違ったスタートをきった。
 まずは5分、NEC陣ゴール前のスクラムを押し込み反則を得ると、NO8松橋周平が迷いなくクイックリスタートからインゴールへ。ルーキーの素早い判断はチームの意思統一が垣間見えたが、何よりも反則を誘ったスクラムの上昇は見逃せない。後半10分過ぎにも敵陣でスクラムを押し、コラプシングの反則からPGを追加するなど試合の鍵を握った。FWをリードしたSH中村正寿もチームが手応えを感じ始めているという。
「昨年は身体を大きくして、今年は組み込んでいます。自分から見ても、スクラムにかける時間がかなり増えている。ラインアウトも含めて、FWがセットプレーに磨いてきた成果が出た試合」
 フロントローは昨年あたりから若手が計算できるようになり、地道なトレーニングで個々が筋力、サイズともにアップさせてきた。さらに春から時間をかけてセットプレーを磨いてきた方向性は間違っていなかった。
 ディフェンス面も粘り強かった。NECはサンウルブズのHB団、茂野海人、田村優を軸に展開して、素早くボールをスペースに運んだが、それには規律を守り、粘り強く対処した。また、ボールキャリアに対して、場面によっては2人で対処するなど、個とチームのディフェンススキルは上がっている。ただ、前半16分には落球からボールを奪われ、自陣ゴール前のラインアウトからモールでトライを許すと、後半35分にもモールでペナルティトライを献上。LO馬渕武史主将は、「ショートラインアウトからのモールディフェンスなど、正直準備不足な面もありました。役割など明確にして、すぐに修正していかないと」と振り返った。
 その後半35分のトライで23−20と3点差に迫られ、キックオフのミスで中央スクラムを与える。嫌な展開だったが、NECのSH茂野のサイド攻撃を中村は素早く予測して、タックルに入り、ミスを誘う。さらに、終盤は自陣22メートル内で猛攻を受けたが、ゴールラインだけは死守した。
「一人ひとりの気持ちの持ちようが違ってきたのかなと。我慢して、反則せずに、次のプレーに行けるか。規律はチームが上に行くためのポイント。一人がサボれば白星が黒になることもあるので。モールに課題は残りましたが、粘り強く止め続ければトライは取られない。逆に攻める方も粘り強く継続できれば、得点は奪える」と中村。
 結果的に決勝点になったのは後半30分のドロップゴール。敵陣で連続攻撃を繰り返し、NECも懸命に止め続けたが、それを見たSOコリン・ボークは中央付近までボールを運ぶように指示。何度もサイド攻撃でフェイズを重ねた末に、比較的狙いやすい位置からボークの右足が3点を奪った。
「結果を残せたことはよかったですが、ゲインライン付近のコリジョン(激突)でのミスは課題に残ります。どうしても、今季はここで前に出たいので」と神鳥裕之監督。
 フルタイムのホーンが鳴り、笛が鳴れば終了となるロスタイム。NECが猛攻の末、紙一重のキックパスがタッチを割った。
「反則をしていたらPGもあった場面。そこが昨年よりも良くなっている部分…我慢です」と中村。
 しつこくフェイズを重ねるスタイルにも、当然のようにミスなくボールを供給し続けた。SHは副将の山本昌太、アジア枠で出場可能な香港代表ジェイミー・フッド、さらにルーキーの高橋敏也と9番を争う。
「競争できるのはいいことだとプラスに考えたい。まだ成長したいので」
 名門・草ヶ江ヤングラガーズから数えると23年目のシーズン。東福岡高時代から才能を言われてきた男がブラックラムズ浮上の鍵を握る。

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ノーサイド直後勝利を喜ぶSOコリン・ボークとLOロトアヘア ポヒヴァ大和(撮影:松本かおり)

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