国内
2016.08.25
好調キープで開幕へ。サントリー江見翔太、世界挑戦のためにトライ王を。
サントリーの江見翔太。写真はパナソニックとのプレシーズンマッチより
(撮影:松本かおり)
春からずっと好調をキープ。サントリー入部3年目の江見翔太は、前年度に続く活躍でスーパーラグビー挑戦を目指す。
「スーパーラグビーは高校時代から観ていて、真似をしたいプレーヤーもいました。自分もそこで試合ができれば」
チームは2010年度から3シーズンで5つの国内タイトルを獲得も、昨季の日本最高峰トップリーグでは9位と低迷。8月26日、大阪・ヤンマースタジアムでの近鉄戦で今季開幕を迎える。
沢木敬介新監督のもと蘇生を図るなか、レギュラー定着を伺うのが24歳の江見である。身長182センチ、体重95キロ。関東大学対抗戦Bに所属する学習院大学時代から7人制日本代表となるなど、かねてその才気を買われていた。
「昔、クルセイダーズにいたケーシー・ラウララのアタックをイメージしたり、いまはハリケーンズのジュリアン・サヴェアなどオールブラックス(ニュージーランド代表)も観ている。外国人選手のプレー、参考になります」
東京は学習院高等科で楕円球と出会ってから、国際リーグのスーパーラグビーが好きだった。当時はプレーの参考資料と捉えていたが、いまは具体的な目標と捉える。前年度に日本から参戦したサンウルブズには、サントリーで同期の垣永真之介も加入。江見が「自分も」と思うのは自然な流れだった。
大きなチャレンジの足掛かりを作るためにも、今季のトップリーグで満足な成果を残したい。そのためにも、新指揮官に請われるWTBの役割を理解する。
「スペースを見つけて、その情報を内側に伝えてアタックする。ディフェンスでも、チームがどういうディフェンスをしたらいいかを早めに発信しないといけない。コミュニケーションが大事になります」
8月12日、東京・東芝グラウンド。同じ府中市で活動する東芝との練習試合に先発し、3トライを奪った。その2トライ目に、「コミュニケーション」の妙を忍ばせた。
前半23分、敵陣深い位置まで攻め上がるサントリーが、右側に複層的な陣形を象る。そのなかには、持ち場の左サイドから回り込んできた江見が加わる。司令塔である小野晃征の斜め後ろに陣取る。東芝のタックラーが他の選手に引きつけられている折、パスを呼び込む。
小野からボールを受け取るや、相手守備網の裏へ一気に抜け出す。追いすがるタックラーを持ち前の馬力で振り切り、歓声を呼んだのだった。
「常にプレッシャーがかかっている晃征さんの周りへ行って、あとは強みを生かしてゴールラインを破ってやろう、と」
定位置争いは厳しい。スーパーラグビーのブランビーズ(オーストラリア)からはナイジェル・アーウォンが参戦。日本代表経験のある長友泰憲や足の速い中?隆彰も元気とあって、昨季の最多トライゲッターは「WTBも当たり前に出られるポジションではない」と自覚する。だからこそ世界への挑戦を前に、定位置確保のための「コミュニケーション力」のアップを欠かせないと捉えるのだ。
「去年から試合に出させてもらったのですが、当時は出ることに一生懸命で、チームとしてどう勝つかをあまり考えられなかった。ただ今年からは、そう考えなきゃいけないようになった。外国人選手も、足の速い選手もいる。そこでどう差別化を図るか。…コミュニケーションが求められてくる。試合に出続けたい。そうでないと、面白くないです。今年も競争して結果を出し続けられれば…。やっぱり、スーパーラグビーは興味があるので。代表を含め、その先の目標につながっていけばいいかなと思います」
フィジカリティと突破力を長所にする日本人WTB。現代にあっては稀有な存在感を発揮すべく、「強みを活かすためにどんな動きをしているか」を徹底的に考える。
(文:向 風見也)