金メダリストから教わった。サクラセブンズ・冨田真紀子、決意表明。
里谷多英さん(右)から金メダルを手渡される冨田真紀子。(撮影/松本かおり)
先輩から渡された金メダル。それを手にしたときの思いをこう話した。
「この重いのをカジリたいな、と思いました」
メダルを渡してくれたのは里谷多英さん。1998年の長野五輪、女子モーグルで頂点に立ったその人は、会社の先輩であり、何度か会食をした仲だ。
開幕目前のリオ五輪。同大会に出場する7人制ラグビーの女子日本代表に内定している冨田真紀子の壮行会が7月21日、勤務するフジテレビで催された。宮澤智アナウンサーが進行役を務めた会には、先輩社員であるとと同時にオリンピアンとしての先輩でもある前述の里谷氏が参加したほか、亀山千広社長や一般社員も集まった。
その会の途中、縁起物として里谷氏が持参していた金メダルが披露され、冨田に手渡された。
「五輪予選でもらったメダルより、ずっと重かった」
ズシリとした重量感と重みを感じ取った冨田は、なんとしても手にしたい気持ちを「カジリたい」と表現したのだ。
「今日あらためて、会社の多くの人たちに支えられていることも実感しました。こんな会も開いていただいて、何としても金メダルを獲りたい。その気持ちが強くなった。笑顔で(日本に)戻ってきたいですね」
世界ランキング12位の自分たちに注目している人は、世界にはほとんどいない。チャンスだ。「下馬評を覆したい」と言った。
壮行会の途中で里谷氏は、以前、冨田と食事したときに聞いた話を紹介した。そのトレーニング内容を聞いて「レスラーみたいな練習をしているなと思った」そうだ。
「社内の階段をダッシュで駆け上がったりしている、って言っていたんです」
冨田が認めた。
「ちょうどいい階段がなかなかなかったのですが、社内に2階から6階まで続いている階段を見つけたんです。ダッシュすれば30秒ぐらいでいけそうだな、と。それで、使わせてもらいました」
進行役に金メダルを獲るメンタルを聞かれた里谷氏は言った。
「世界の舞台に立ったときには、そういったもの(どれだけ練習をやってきたか)が自信になる。私も五輪の前、ランクは上位ではありませんでした。大舞台で緊張するなといってもそれは難しい。力を出し切ること。それだけをやってきてください」
7月に入ってからこの壮行会の直前まで、北海道でおこなわれた強化合宿で鍛え続けた。充実したトレーニングにより、あらたに得た自信も。男子チームとの実戦で結果を残したことも大きい。
「大会では初戦に勝って勢いをつけるのが大事だと思っています。いい流れを作り、決勝トーナメントに進みたいですね。(同じプールの)カナダ、イギリスには勝ったことはありませんが迫ったことがある。ブラジルには以前、勝った」
長い時間をかけて世界一のフィットネスを作り上げてきた。それを武器に、暴れてくるつもりだ。
会の最後、冨田は湧き上がる思いを言葉に変えて決意表明をした。
「ラグビーを中学生のときに始めました。楽しくて、痛いこともたくさんありましたが、、仲間のためならそういうことも我慢できました。そうやってラグビーを続けている途中でラグビーが五輪競技になった。最初は夢のような話、雲の上の話だったものを、自分の足で切り拓いていけた。五輪では、私たちのチームワークは世界一ということも見せたいですね。それを武器に戦いたい」
8月2日、ブラジルの地で25歳になるアスリートが、「全力で戦ってきます。多くの人たちの応援は戦いの最後の最後の場面で力になるので、皆さん、テレビの前で応援してください」と呼びかけると、多くの拍手が起こった。