海外
2016.05.15
紙一重ドローの舞台裏。サンウルブズの献身とストーマーズの「幸運」
ストーマーズのディフェンスを突破するサンウルブズのパエア ミフィポセチ(撮影:長岡洋幸)
<スーパーラグビー2016 第12節>
サンウルブズ 17−17 ストーマーズ
(5月14日/シンガポール・ナショナルスタジアム)
サンウルブズは準ホームのシンガポールに、アフリカ1組首位のストーマーズを迎えた。
前に対戦した第7節には、ケープタウンで19−46と屈していた。何より7日前の前節では、国内でのフォースとの1勝同士の一戦を22−40で落としている。
期待感の醸成が難しいなか、しかし、最後まで白星に手をかけた。
防御を改善した。FLアンドリュー・ドゥルタロいわく、守備網の飛び出しが乱れたフォース戦の真の問題点を「接点に入り過ぎた」と分析。本来の守り方を再確認した。
2人がかりのタックルで相手走者の勢いを止め、うち1人はすぐ次の守備列に入る。数的優位を保ったラインが一気に飛び出し、また2人でタックル。その繰り返し。まして今回の敵は、大型選手が真っ直ぐ突っ込む南アフリカのチームだ。田邉淳アシスタントコーチも解説する。
「まず、2人で勢いを止める。ただ、そのうち2人目は(接点に)入り過ぎない。そしてライン(飛び出す)スピードを上げる」
象徴的な場面が、8−3と先行して迎えた前半18分頃にあった。
自陣中盤で「189センチ、109キロ」のセンター、ダミアン・デアリエンディの突進を食い止めてからは、隣同士の連携を保つ。
ストーマーズが束で突っ込んでも、攻撃方向と逆へのパスを織り交ぜても、サンウルブズは態度を変えない。
自陣ゴール前中央では、NO8エドワード・カークが2つ続いた接点に入りかけては頭を抜き、左でできた3つ目で相手のサポートを羽交い絞め。ややテンポを鈍らせた。さらにストーマーズが継続も、球を乱す。
右タッチライン付近で攻守逆転に成功したのが、密集に絡む職人、FLドゥルタロだった。
「いいディシプリンが保てた」
当の本人は味方を称えるのみだ。
一方、相手の背後へのキックでローリスクに戦えたCTB立川理道ゲーム主将は、こう言葉を重ねた。
「力を出し切れば、強い相手にも強いディフェンスができる。(NO8カークやFLドゥルタロら)FWはハードワークしてくれました」
アジア特有の熱帯夜である。着実な加点で17−3とリードしたFLドゥルタロは、相手の様子を「イライラしている」と見た。「嵐」は後半25分、スクラムを押し込んだ直後のパスを前方に流す。スローフォワードという反則で、「狼」にチャンスを手渡した。FLスカルク・バーガーは、「とてもタフだ」と実感した。
17−10で迎えた最終盤、敵陣ゴール前でボールキープ。CTB立川ゲーム主将は考えた。時間を稼ぎ、最後にドロップゴールでだめを押す…。
が、隙ができた。ボール保持者と援護者の間にわずかな隙が。
FLバーガー、ターンオーバー。
ここから短い手数の反撃が始まり、最後の最後でドローとなったのだ。
「経験の少ない部分が出た…」
新規参入クラブのCTB立川ゲーム主将は意気消沈の面持ちだった。
戦前評こそ苦戦必至なゲームも、優勢に運んで落とせば惜敗と映るか。
歓喜と落胆の差が紙一重の空間にあって、追いついたFLバーガーは「我々は幸運だった」と言い残した。
(文:向 風見也)