国内
2016.04.18
「練習できついことをして、試合で喜ぶ」。大東大、復権への序章。
昨季大学選手権準決勝での大東文化大SO川向瑛。今季は主将としても期待される(撮影:松本かおり)
日本の大学ラグビー界で1980年代に躍動、モスグリーンのジャージィでおなじみの大東大が、勝負の年を迎えている。
昨シーズンは所属する関東大学リーグ戦1部で4位ながら、日本一を争う大学選手権で16季ぶりの4強入り。今年度は、青柳勝彦監督が就任した2013年度の入部組のラストイヤーだ。4年には下級生の頃から主力を張る選手も多く、周りからの期待は大きい。
「1人ひとりのラグビーへの意欲が全然、変わってきた。負けていた時はだらだらした感じがあったけど、いまは自らやる、と。去年の試合は、やった人も観ていた人も何かを感じたと思う」
新チームが始動した3月、1年時からレギュラーだったSO川向瑛主将は喜びを感じた。
先のシーズンでは、1月2日の大学選手権準決勝で帝京大と激突。結局、7連覇を果たした相手に33-68と屈したが、ツボにはまった時の攻撃などに確かな手応えをつかんでいた。もう1度、あの舞台へ。さらに、その上へ。1つひとつの練習への個々の姿勢が、前向きなオーラに包まれているようだ。
自慢のトンガ人留学生は健在。強力ランナーの4年のWTBホセア・サウマキは、昨冬の故障も癒えた。NO8アマトとLOタラウのファカタヴァ兄弟は来日2年目と、よりいまの環境に慣れつつある。元日本代表のシナリ・ラトゥの息子で3年のCTBラトゥ クルーガーらとともに、相手守備網をこじ開けにかかる。
ずっと川向とコンビを組んできたSH小山大輝も、さらなるバージョンアップを誓う。鋭利なサイドアタックとタックルを長所に、全国的に無名な北海道・芦別高出身も高校日本代表入り。いまは2019年のワールドカップ日本大会出場へのアピールのため、ゲーム理解度とフィジカル強化にいそしんでいる。最上級生としての意欲もあり、こんな思いも明かしていた。
「帝京大という目標を立てて、できることをやる。一番は、チームまとめをサポートする。自分たちが卒業したら(長らく主力だったメンバーが)一気に抜ける。どんな雰囲気で練習をしたらいいか、とか、後輩に教えることも大事です」
オフは各自、体重アップに挑戦。首脳陣が提示したウェイトトレーニングのプログラムを咀嚼し、取り組んだ。ぶつかり合いの連続に屈しない身体を、段階的に作ってゆく。
4年で快足のWTB戸室達喜は、前年度から6キロ増の80キロとなった。「動くとあまり太らないので、オフシーズンは食べる量を増やしました。以前は(相手に)名前負けしていた部分もあるけど、それがなくなった。瑛に頼り切らず、4年皆でやっていこうと話しています。瑛の言ったことを改めて『意識しよう』と言ったり」と笑う。
卒業生らの要望で主将を任されたSO川向も、自らも「2〜3キロ」のアップに成功した。春の関東大学春季大会ではグループBに参画。初戦は5月1日で、リーグ戦で6位だった拓大と東京・八王子の相手本拠地でぶつかる。船頭役は、好不調の波を抑えれば誰にも負けないと強調するのだった。
「大東大には、負け試合になる流れがある。そうならないように、ちょっとでも雰囲気が悪ければ皆を集めて意志統一。それを普段の練習からやるようにしています。練習できついことをして、試合で喜ぶチームにしていきたいです」
(文:向 風見也)