班長? それとも課長? ヤマハ・山本幸輝、スクラムに生きる。
1月9日、全国各地でトップリーグの順位決定トーナメントが始まった。大阪・長居のキンチョウスタジアムでは、LIXIL CUP 1回戦「ヤマハ発動機ジュビロ対NTTコミュニケーションズシャイニングアークス」の試合が行われた。五郎丸選手の人気もあって抜群の集客力を誇るヤマハ発動機。同チームが今季初めて大阪にやって来るとあって、開門前から数多くのファンが列を作った。本欄「ラグリパWEST」としては、当然のごとく、大阪出身者に注目しようとしたのだが、メンバー表を眺めて愕然とした。リザーブも含めて、両チーム46名中、大阪出身は、NTTコミュニケーションズの金正奎のみ。ヤマハ発動機にいたっては、大阪出身は清宮克幸監督だけだった。
そこで、両チームで唯一、大阪の大学(近畿大学)を卒業したヤマハ発動機PR山本幸輝(181?、116?/25歳)に注目した。滋賀県の八幡工業高校から近畿大学に進み、ヤマハ発動機入りして3年目。日本ラグビー界のスクラム番長、長谷川慎FWコーチの指導でめきめき成長中。国内シーズンが終われば、サンウルブズの一員としてスーパーラグビーへの参戦が待っている。この日も、スクラムの最前列でNTTコムに圧力をかけ続け、前半終了間際のスクラムトライ、後半のペナルティートライを導いて見せた。
「80分、自分たちのスクラムを組めたのは良かったです。前半にボディーブローを打って、最後にスクラムでペナルティートライを奪えたのは、チームとして理想の形だと思います」
実はキンチョウスタジアムは、山本幸輝にとってはほろ苦い思い出がある場所だ。近畿大学4年の最後の関西大学Aリーグの試合(2012年11月25日)で、関西学院大学に負けたのだ。
「あのときと同じベンチだったんですよ。思い出にふけりました」
この日も、近畿大学ラグビー部時代のチームメイトが応援に訪れていた。
「人が多すぎて、見つけられなかったんですけどね」
大阪でやるときは、いつにも増して気合が入るという。
「社会人になって1年目に大阪でやったときは、はりきり過ぎて足が攣りました(笑)」。
ヤマハではレギュラーポジションをがっちりつかんだ山本は、サンウルブズでのプレーも大いに楽しみにしている。
「僕に断る理由はありませんでした。日本代表への近道でもあるし、呼んでもらえるだけで感謝しています。南アフリカ勢との戦いは楽しみですね。スクラム自慢の選手とやってみたいです」
日本では対戦できない巨漢選手、怪力選手との真っ向勝負は日本代表を目指す山本にとってまたとない経験となるだろう。
もちろん、その前にトップリーグ制覇、日本選手権連覇である。1月16日の準決勝の相手は東芝ブレイブルーパスだ。
「東芝と試合するのは、真っ向勝負で、めちゃくちゃ楽しいんです。去年試合をしたときは、最初、なかなかスクラムにならなくて、お互いに『スクラム組ませろ』、『スクラム組もうぜ』って言い始めたくらいですから。プロップって、ファーストスクラムまでは、ソワソワしているものなんですよ」
早く組んで相手の力を感じ、それにどう対応するか。プロップにとってはそこから試合が始まるのかもしれない。そう聞くと、東芝戦がますます楽しみになってくる。
「僕はまだ、スクラム班長にも、課長にもなんにもなっていないんですけどね(笑)」
番長と微妙にずらすあたり、面白い。
次週は東大阪市の花園ラグビー場での戦いである。東大阪市と言えば近畿大学がある場所だ。大学時代のチームメイトの応援も多くなるだろう。思い出の地でさらに輝けるか。次週もラグリパWESTは山本幸輝に注目である。
■写真:NTTコム戦での山本幸輝。ランでもボールを前に運んだ。(撮影/早浪章弘)