国内 2015.12.31

5−3。2回戦屈指の好試合。天理高の守りは常翔学園にとって「ややこしい」

5−3。2回戦屈指の好試合。天理高の守りは常翔学園にとって「ややこしい」
天理と常翔学園。ともに気迫あふれるすばらしいディフェンスだった(撮影:松本かおり)
 スタンドに入りきらないファンは、芝の周りの陸上トラックで観戦した。12月30日、大阪・花園ラグビー場の第3グラウンド。全国高校ラグビー大会2回戦の注目カードがあった。1回戦を乗り越えた奈良・天理高(2年ぶり62回目)が、シード校の大阪・常翔学園高(3年ぶり34回目)と激闘を演じた。5-3。僅差で勝った天理高は、2016年1月1日に埼玉・深谷高(2年連続8回目)とぶつかる。
 天理高のSO林田拓朗主将は、攻めては「前で、前で、と、スピードを保って仕掛けられたらいいと思っていました」。ゲインライン近辺でのパスで、チームを「前」に押し出した。前半終了間際には敵陣22メートル手前左中間で、数的優位の局面を迎える。パスダミーを入れて、直進する。次のフェーズではゴールラインとほぼ平行なパスで、守備網の背後を突いた。WTB小川大地のトライを演出した。ここで5-3となったスコアは、最後の最後まで変わらなかった。
 後半は陣地の取り合いで優勢に立った。「FWも、BKばりに走っているんで。チェイスで前に出られた」。SO林田主将のロングキックの軌道へ、LO紺谷憲治らが果敢に突っかける。しばし相手のキックの軌道を乱し、後半10分には敵陣22メートルエリアで球をはじいた。スタンドの歓声を呼んだ。
 自陣に攻め入られても、白いジャージィの背番号1桁台のメンバーが低くぶっ刺さった。常翔学園高のSO吉本匠ゲーム主将は「エリアをうまいこと取られて、取り返さなあかんと思ったのですが…。チームを動かしながらキックを蹴ることができなかったです」と悔やみ、こんなフレーズで相手の好守を称えた。
「1人ひとりが踏み込んできていた。僕らはそれをずらそうとした(真正面で当たらないように試みた)んですが…。内、内(接点周辺)から(タックラー)が湧いてきて…ややこしかったです」
 後半29分、敵陣10メートル付近左中間。常翔学園高は、決めれば逆転となるペナルティゴールを獲得する。仲間に「決めてこい」と言われたSO吉本ゲーム主将は、静ひつな空気のもと球を蹴る。弾道は、左にそらした。
「練習している通りに入る、と思っていたのですが…」
 1年時に頸椎脱臼骨折を負ったFL金澤巧貴主将は、車いすに座って戦況を見守っていた。
「俺、絶好調」
「俺も絶好調」
 これが、SO吉本ゲーム主将との試合前の会話だった。
(文:向 風見也)

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