コラム 2015.12.21

奈良市で初のトップリーグ開催は盛況 近鉄ライナーズ×東芝ブレイブルーパス

奈良市で初のトップリーグ開催は盛況 近鉄ライナーズ×東芝ブレイブルーパス
 奈良市では初となるトップリーグ公式戦が20日、市営鴻ノ池陸上競技場であった。
 地元の近鉄ライナーズと東芝ブレイブルーパスが激突。試合はゲーム主将のNO8リーチ マイケルのタテ突進などで58-12と東芝が圧勝。勝点22としてAグループの2位に浮上、同19の近鉄は5位に沈んだ。
 試合運営にあたったのは奈良県協会だ。理事長・森田晃充を先頭に動き、大きな混乱もなく、無事に一大イベントを終えた。
「盛大にできました。晴天にもめぐまれ、ファンの方にも足を運んでもらえ、両チームもいいゲームを見せてくれました。次につながった。来年も仮押さえをして、また開けてもらえるようにしたい」
 実務面のトップからは安ど感が漂う。
 県内でのトップリーグは2年連続2回目。初開催は天理市で昨年10月19日、クボタスピアーズ対宗像サニックスブルース戦が行われた。親里競技場には観衆2573が集まったが、この日はワールドカップによるブームも手伝って2倍強の6156。
 縦70メートル、横100メートルの総天然芝のフルサイズグラウンドや最寄りの近鉄奈良駅から路線バスなら10分、徒歩でも20分程度とアクセスも悪くない点も幸いした。
 会場の鴻ノ池は元々ラグビーポストが立てられなかった。しかし、昨年10月、リーグ戦を観戦した市関係者から「奈良市でもラグビーを」の要望が高まり、ポストが新設される。9月5日には、完成記念の奈良市ラグビーカーニバルが開かれ、SO三原亮太ら近鉄選手によるゴールキック初蹴りがあった。
 トップリーグを迎える準備はそれに先立つ1か月前、8月から行われていた。
 得点板やインゴール裏に敷く人工芝は親里から借り受けた。トラックで約1時間かけて運び入れる。
 芝生のフィールドとアンツーカーのトラックを仕切るレールは、地元の大学生約20人が1時間かけて手作業で外した。
 当日、関係者受付に立ち、来賓者の接待対応をしたのは関西協会、日本協会の広報役員でもある県協会理事の北畑幸二だ。
「トイレはどこ、という問い合わせや苦情なんかがみんなここに来る。それらをさばくのが大変」
 息子の勝大は京都産業大でジュニア育成コーチをつとめる。自身もラグビー経験のある北畑は難しさを口にしながらも、表情はいつも同様柔和だった。
 県内に鉄道網を張るホームチーム・近鉄も開催に協力する。
 車内で車掌が試合をアナウンスする。ポスター200枚を沿線各駅などに掲示、ちらしも配った。
 試合は近鉄のグループ会社、近鉄ケーブルネットワーク(KCN、ケーブルテレビ)により県内に生中継された。
 試合当日はチームの現場最高責任者、ゼネラルマネジャーの木村雅裕自ら近鉄奈良駅の改札口で鴻ノ池への道案内の紙を貼った。
「試合の日にチーム関係者で一番ヒマなのは俺やから」
 東芝監督の冨岡鉄平は感想を漏らす。
「なんと言ってもピッチがいい。こんな芝生でできるのは選手にとってはすごくありがたい。ケガが出にくくなります。今日は大きいケガがなかったですよね」
 鴻ノ池はサッカーJFL(Jリーグの下部リーグ、4部に相当)の奈良クラブのホームグラウンドのため、芝状態は元々よい。
 JFLはシーズン終了していたため、芝生の長さはサッカーより若干長いラグビー用の35ミリに合わされている。
 リーチは「完ぺきです」と試合に臨んだ。
 冨岡は地方都市開催も意に介さない。
「ジャパンがワールドカップで勝ってくれた追い風に乗って、今度は僕たちがもっとラグビーの良さを伝えていかないといけません」
 陸上競技場の性質上、ロッカーは正面左側にかたまっていたため、両チームは隣り合わせ。シャワーが2つしかないなど不便はあった。しかし、冨岡は不満を述べなかった。
 東芝・大野均、廣瀬俊朗、ケガで出られなかった近鉄・トンプソン ルークの日本代表3人はスタンドから下される色紙やジャージーに最後までサインをし続けていた。
 試合前には市内に学校がある県立奈良朱雀(すざく)高校和太鼓部などによる演奏。プロバスケットボール、バンビシャス奈良のチアリーダー「バンビーナス」がハーフタイムショーをするなど、地元を代表するユニットが盛り上げに一役買った。
 アフターマッチファンクションでは名物の柿の葉ずしが振る舞われる。
 県協会と市、さらに近鉄、東芝と両チームが一体となり成功裏に終わった一戦。県のラグビー熱はさらに高まる様相を見せている。
(文:鎮 勝也)

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