ワールドカップ 2015.09.02

期待され続けた30歳、初のW杯へ 山田章仁「トライを取りたい」という背景

期待され続けた30歳、初のW杯へ 山田章仁「トライを取りたい」という背景

 ラグビー日本代表は8月31日、9月からのワールドカップ(W杯)イングランド大会の登録メンバー31名を発表。WTB山田章仁は、30歳にして初めて大舞台に挑む。

「WTB山田です。いまここに立てていることを嬉しく思います。初めて日本代表のジャージィに袖を通したのがこのエディージャパンで、ここにいるみんな、ここにいないみんな、最高のスタッフたちと、すごくいい時間を過ごしてきました。ファンの皆さんにもすごく応援をしていただいて本当に感謝していますし、その思いは、イングランドで、グラウンドで表現していきたいと思います。応援よろしくお願いします」

 都内での発表会見。壇上での全選手の一言あいさつのトリを務めた。「言葉が出なかったらそれはそれ」とスピーチを事前に考えない30歳は、代表選手であることへの喜びを簡潔に表した。その後の取材機会では、W杯は「発表会」だと言った。

「発表会。いままでやってきたことを出せさえすれば、いい作品が作れるんじゃないかな、って思います」

 奇抜な走りで慶大時代から名を馳せ、一時はアメリカンフットボールにも挑戦した。日本最高峰のトップリーグ(TL)ではパナソニックの一員として、2012年度にトライ王を獲得。国内では十分な話題と実績を残してきた。しかし、日本代表とは縁遠かった。

 2011年のW杯ニュージーランド大会は候補合宿に呼ばれるも出場は叶わず。エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(HC)が率いる現体制下でも、しばしメンバーからの落選と合宿からの強制送還を余儀なくされた。それでも「最終的には、(ジョーンズHCは)選手の能力を上げることを考えてくれる人だと思う」と食らいつき、ボスから与えられた課題を消化。2013年秋に初キャップ(国同士の真剣勝負への出場)を獲得した。

 今季はウェスタン・フォース(オーストラリア)に入って南半球最高峰スーパーラグビーへも挑戦した。「チームメイトや対戦相手にW杯に出るような選手がいっぱい。彼らが試合前にどんなふうにモチベーションを上げているかを実際に観られた」。満を持しての大舞台に向け、こう意気込んでいる。

「トライを取りたい」

 宣言には、背景がある。

「本当はトライキャラじゃないんですけど、皆に覚えてもらうにはトライかな、って」

 代表デビューを果たす前にはしばしこう言っていたWTB山田だが、ジョーンズHCに認められるべく、取り組むプレーの優先順位を変更している。

「ボールタッチ数を増やしたい」

「コンタクトのところでしっかりしたプレーを」

 シーズンごとの目標には、直近で指揮官に言われたことをほぼそのまま掲げてきた。代表定着後も、堅実さを心掛けてきた。

 そして、W杯の直前。あえてかつてのように「トライを」と発することにした。

 次の舞台は普段と違う。そう認識するからだ。

「いろいろと考えてもわからなくなる(焦点がぼやける)。だからトライを取るという(自分のなかでの)道筋を作っていきたいです。向こうへ行ったら、結果が全てなので」

 チームは1日に渡英。5日にグロスターでグルジア代表とぶつかる。現在のWTB山田は右股関節などの怪我を治療しているが、「(往路の)インド上空あたりで100パーセントになる」。19日、ブライトン。万全の状態で、初戦の相手である南アフリカ代表を迎え撃ちたい。

(文:向 風見也)

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