田中史朗、凱旋帰国　ハイランダーズのSR優勝とW杯を語る

ニュージーランドから帰国してメディアの取材に答える田中史朗（撮影：向風見也）

　今季、南半球最高峰のスーパーラグビーで王者となったハイランダーズのSH田中史朗が、14日、帰国した。千葉・成田空港で報道陣を前に思いを語った。

　身長166センチ、体重75キロと小柄な身体つきながら、相手の盲点を突く判断と負けん気で日本代表44キャップ（国同士の真剣勝負への出場数）を獲得した田中。加入3年目だったハイランダーズでは15試合に出場（うち先発は2試合）。世界ランク1位のニュージーランド代表であるアーロン・スミスとポジションを争い続けながら、インパクトを示した。7月4日のプレーオフ決勝（対ハリケーンズ／ウェリントン／○21-14）でも出番こそなかったものの、ベンチ入りを果たしていた。

「出られなかったのは残念でしたけど、優勝できたチームの一員であれたことは誇りです」

　第一声には、充実感がにじんだ。

「ニュージーランドのチーム同士の決勝戦、どちらも初優勝がかかっていて…。気持ちの面が出ていて、尊敬できました。オールブラックス（ニュージーランド代表）がもともと（開幕時）3人しかいなかったハイランダーズが結果を出した。『日本人は世界でやれない』という言い訳が通用しないこと、誰でもできるということを証明してくれていると思います。それは（日本代表などに）還元したいです。ハイランダーズはチームがまとまっている。リーダー陣が話し合って、コーチ陣が話し合って、選手に落とし込んで…。システムがしっかりしていました」

　今後は地元・京都などでオフを過ごす。北米遠征中の日本代表には、7月下旬に合流予定だ。9月からは4年に1度のワールドカップがイングランドであり、活躍が期待される。

「僕個人の能力は上がっていないので少し心配ですが、いい経験は積めた。それを日本のラグビーに還元できたらと思います。選手と話していると、練習がしんどいと言っていた。しんどいことは全然いいと思う。ただ、それが日本のラグビーにとって（将来的にいい方向へ）つながっていくものなのかどうかを話し合っていきたいです。自分の能力的には、試合に出られるかどうかはわからない。ただ、スタッフと選手の間に入って、日本をまとめることができたらな、とは思います」

　日本のパイオニアとしてあえて厳しい提言を重ねるこの人らしい見解だ。本番へ。意気込みを問われれば、「覚悟を決めてやりたいです」と話した。SH田中が海外で得た最大の収穫が、この「覚悟」の真意に込められている。

「ダサいですけど、死ぬ気で、というか…。それは、スーパーラグビーで学んできたこと。怪我をしていても、プレーになれば、やる。それがニュージーランドの人たちの特徴で、日本人には足りないところです。自分がしっかり身体を張って相手に向かっていけば、皆もついてきてくれるのかな、と思っています」