海外 2015.05.14

SRデビューへ手応え レベルズPR稲垣、「W杯のためにこっちを選んだ」

SRデビューへ手応え レベルズPR稲垣、「W杯のためにこっちを選んだ」

inagaki

パナソニック、そして日本代表の左PR稲垣啓太。現在、豪・レベルズで奮闘中
(撮影:TAKASHI TAKASHIO)

 今季から南半球最高峰のスーパーラグビーに挑戦する稲垣啓太が13日、滞在先のメルボルンで電話取材に応じた。いまだ公式戦デビューが叶わぬなかで「焦らない方がおかしい」と心境を吐露したが、「手応えはあります」とも言い切った。

 パナソニックの一員として臨む国内のトップリーグでは、ルーキーイヤーの2013年度に新人賞を獲得。豊富な運動量と強烈なタックルを持ち味とするPRとして、14年には日本代表としても2キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を勝ち取った。右肩上がりの成長を遂げるなか、同じパナソニックのHO堀江翔太主将が在籍していたレベルズから声がかかった。

「国内にいるか。レベルの高い環境にチャレンジするか。即決はできなかった。でも…」

 日本での14年度シーズンを終えた3月からオーストラリアへ移住。現在、スーパーラグビーでの初陣を目指している。

「例えば、ホールドでの(タックルを伴わない)練習。日本では相手に軽く胸を当てるだけで次のポイントへ行くのですが、こっちではホールドといってもフルでぶつかる。常に全力で(ボールを)取りに行かないといけない。だから、常にぶつかる姿勢を作る。これが癖になっている。こういう日常の癖が試合にも出てくると思っています。そういう意味では、いいイメージでできているんじゃないですかね」

 課題は「戦術理解」だと話す。レベルズの練習では決め事が「細かい」ようで、「その内容がほとんど英語で…」と苦笑していた。言葉の壁は「練習が始まってしまえば問題ない」ものの、「コーチの言っていることはわかっているとは思います。ただ、これが本当にわかっているのかは…」。言葉のわずかな解釈の違いが、「戦術理解」の不足と捉えられるのではないか。その心配は、常にありそうだ。

 もっとも、PR稲垣は言う。

「スクラムはチーム内では十分に組めていて、フィジカル(肉弾戦での激しさ)にも慣れてきた。『戦術の理解がついてくれば、試合で使いたいと思っている』と評価もしてくれている。最初は、シークエンスの練習の時にウロチョロしてしまうところがありましたから。ここ3週間くらいは、出られるか出られないかのところへ来て、結局は出られないという状況が続いています。…高校(新潟工)、大学(関東学大)、パナソニックと1年目から試合に出させてもらってきていた。いま、こういう悔しい経験、サバイバルのような生活をできているのは、大切なことだと思っています」

 レベルズは今季ここまで6勝5敗の勝点29で15チーム中10位。15日にはレッズとの第14節をおこなう(ブリスベン)。PR稲垣の日本代表への合流はシーズン終了後の見込み。9月に控えるワールドカップイングランド大会を見据え、当の本人は「もちろん出たい。そのためにこっちでやることを選んだので」と決意を明かす。

「なかなか、難しいところもあります。(4月の宮崎合宿から)日本代表にいる人もいるなか、自分は別の場所にいるので。ただ、ここで日本に帰っても通じるようなレベルアップをするしかないですね。この選択をしたことへの悔いはない。『来てよかった』。これをただの『来てよかった』にさせないためにも、試合に出たい」

(文:向風見也)

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