「彼はずっとタックルがしたかった」(ディーンズ) 谷田部がタックラー賞!
日本最高峰のトップリーグで2連覇を決めた2月1日の夜のことだ。打ち上げの合間、今季限りで引退するパナソニックのCTB霜村誠一が集まったファンに仲間を紹介した。誇らしげだった。
「最初はタックルができなかったんですけど、明日、表彰式でベストタックル賞を受賞するんです!」
傷だらけの顔をほころばせた当の本人は、翌日、予定通りに都内で登壇した。
「正直、びっくりしています。同時に、とても嬉しく思います」
シーズンのMVPやベストフィフティーンなどを表彰する場で、今回から「トップリーグ公式アプリ賞」が新設された。同アプリで扱う各種データに基づき、チームや選手を表彰する特別賞だ。
タックル成功率の最も高い選手に与えられるタックル部門では、今季王者のパナソニックのLO谷田部洸太郎が受賞第1号となった。この人の若手時代を知る飯島均元監督は、「谷田部があんなにタックルに行くとは。わかったのは、人に先入観を持ってはいけないということです」。本人と、その才能を伸ばした周りのスタッフを褒め称えた。
2010年には7人制日本代表に選ばれるなど、身長190センチ、体重105キロのサイズとスピードを評価されていた谷田部だが、タックルは、苦手だった。国士舘大を経て入部後、5年間公式戦出場はなかった。しかし、今季は開幕からレギュラーに定着。前年度までアドバイザーだったロビー・ディーンズ新監督に、「練習でパフォーマンスが良かった」と献身的な気質を買われた。
「試合に出ていないシーズンも一生懸命、トレーニングはしていた。準備はできているだろう、と。チャンスを与えた選手のリアクションは想定できないものですが、彼のそれは良かった」
昨季からチームに関わるフィル・ムーニー パフォーマンスマネージャーのもと、練習や試合の映像を観ながら細やかにプレーを分析した。技術を磨き、それを試合で成功させるたびに自信を深めた。分析と実戦を重ね、いまは「まだ完成じゃないけど、一皮むけた実感はあります」と胸を張る。
「スタッフのレビューの結果、身体をぶつけることが好きになった。開幕くらいから、ディフェンスへの意識はさらに高くなった。1試合、1試合やるごとに、課題を修正した」
堅守を伝統的な強みとするパナソニックにあって、「タックルだけど、アタックみたいに行けるようになった」。本人は「言葉では上手く言えないですけど、自分から前に出て行けるようになった」と笑うのだった。
2月22日から参戦する日本選手権に向け、指揮官はLO谷田部にこう視線を向ける。
「彼はずっとタックルをしたいと思っていた。その正確性が高まった。デビューして、タックルを決めるたび、またタックルしたいと思うようになったんです」