釜石がチャレンジ1で価値ある勝利。三菱重工相模原と「勝ちたい気持ち」の差
日本ラグビー史に一時代を築いた伝説のチーム、新日鉄釜石ラグビー部の魂を受け継ぐ釜石シーウェイブスが、2001年の創部以来、トップチャレンジ1で初めて勝利を手にした。福岡・レベルファイブスタジアムで25日、三菱重工相模原ダイナボアーズを27-26で下す。各地域リーグの1位チームに挑んだ戦いは1勝2敗(総勝点5)で最下位に終わったものの、悲願のトップリーグ昇格をかけた入替戦へ向け、自信をつける大きな勝利となった。
「トップチャレンジ1に初めて参戦し、Honda(第1節)、九電(第2節)と戦ってみて、決定力の差を感じた。トップリーグでプレーしたことがあるチームとの経験の差かもしれない。この一週間、自分たちが重点的にやってきたのはディフェンス。ロータックルを繰り返し、ボールを奪ったら継続して、何回もアタックしてスコアを取ろうと考えていた。三菱さんとはイーストリーグでも戦い、(今季は)勝てなかったので、特別な相手としてチャレンジした」(釜石・三浦健博ヘッドコーチ)
試合は釜石がPGで先制したものの、三菱重工相模原が3連続トライでリードを広げる。前半11分にモールを活かし、20分にはキックレシーブからのカウンターアタックでWTB椚露輝が飛ぶように右サイドを振り切り、23分はCTB藤澤典迪が力強く駆けて得点を重ねた。
しかし、3-19とされたものの釜石はしぶとく、26分、ゴール前でフェイズを重ねてWTBタウファ タフィアイバハ優が抜け出し点差を詰めた。34分にはキャプテンのNO8須田康夫が突破して敵陣22メートルライン内に入り、FL千布亮輔がサポートしてトライ。17-19とする。釜石はオフロードパスを巧みに使い、キックによるエリアマネジメントも流れをよくした。
そして、大きな勝因となったのがスクラムでの奮闘だった。前半から手ごたえを感じていた釜石は55分(後半15分)、ゴール前でスクラムにこだわり続け、押し込み、日本代表でもあるLOヘーデン・ホップグッドが逆転トライを挙げた。
三菱重工相模原は71分に再び先行したものの、その約8分前のプレーが結果的に明暗を分ける。FWがゴール前で突進を繰り返し、ラインを越えてボールを押さえたかに思われたが、レフリーはトライを認めなかったのだ。
必死に食らいついた釜石は残り時間4分を切ったところで、FL千布が抜け出し、ゴール前でCTBジェームス・カマナにつないで再逆転。27-26で、歓喜の瞬間を迎えた。
「三菱は得点力が高いチームだが、前半をロースコアで折り返すことができたのは大きかった。前回(トップイースト)は三菱さんにセットプレーで苦しめられ、何もさせてもらえなかった。逆に今日はスクラムで押し込んでトライを奪うこともでき、三菱さんのストロングポイントをなくしたことも勝因だと思う」と三浦ヘッドコーチ。須田キャプテンは「最後は『勝ちたい』とずっと思い続けたことがパフォーマンスにつながって、いい形でゲームを進めることができた。僕たちにとって、価値ある勝利だったと思う」と笑顔を見せた。
1907人の観客、釜石のファンは三菱重工相模原のサポーターに負けないくらいの大声援を送った。須田はこう振り返る。
「釜石シーウェイブスとして僕が福岡でプレーするのは初めてだったので、どれくらい(応援してくれる)人がいるのかわからなかったけど、サポーターの皆さんは福岡まで駆け付けてくれて、非常に力になりました。感謝しています」
2月14日に埼玉・熊谷ラグビー場でおこなわれる入替戦の相手は、今季トップリーグで13位だったクボタスピアーズだ。
「僕たちに失うものは何もない。すべてを懸けられる。一発勝負を楽しみたいし、それに向けてしっかり準備をしていきたい」
一方、敗れた三菱重工相模原の高岩映善監督は落胆と悔しさをにじませ、「多くのファンや会社関係者に応援に来ていただいたにもかかわらず、ふがいない試合をしてしまって、申し訳ないの一言。こういうゲームはしてはいけない。責任は私にある」と語った。
敗因を問われ、「まずはセットプレー。それ以外にも、つまらないミスが多かった。そして、背景にあるのは純粋に、『勝ちたい気持ち』の差だったと思う」。
入替戦(2月14日/愛知・瑞穂公園ラグビー場)の相手は、トップリーグで15位だった豊田自動織機シャトルズ。
「もう1回、チームをひとつにして戦いたい」