国内 2013.02.05

【明】 死力でつかんだ昇格切符 豊田自動織機 トップリーグ復帰

【明】 死力でつかんだ昇格切符 豊田自動織機 トップリーグ復帰


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大一番でブレイクスルーを連発した豊田自動織機NO8ライアン・カンコウスキー


(撮影:Hiroaki. UENO)


 


 


 豊田自動織機シャトルズが3季ぶりにトップリーグへ復帰する。2月3日、福岡・レベルファイブスタジアム。福岡サニックスブルースを34−28で下した。トップリーグ10年の歴史で、地域リーグのチームが入替戦に勝って昇格を決めたのは初めて。



 試合後、田村誠監督はこう言った。
「結果が出なければ、どんなにいいラグビーをしても評価に値しない試
合でした。これまでいい思いをできずに引退したOBがたくさんいる。今日の試合に勝てたことは、そういう意味でも大きかったです」



 序盤から豊田自動織機は主導権を握った。開始5分、ラインアウトからモールで押してFL小山田岳が飛び込んだのを皮切りに、前半26分まで5連続トライ。



「実は5年前から、毎年2試合ずつくらい藤井さん(サニックス/藤井雄一郎監督)に胸を貸していただき、本当に速いラグビーを経験させてもらったんです。どういう縁か今回対戦することになり、どれくらいのスピードかというのを、選手はキックオフのスタートで思い出したのではないか。スピード負けしていなかった。サニックスさんのおかげでもあったシーズンかなと思います」(田村監督)



 前半8分、豊田自動織機はNO8ライアン・カンコウスキーが自陣10メートルから中央突破し、敵陣22メートル付近まで走ったことろで左クロスへキックパス。WTB朝見力弥が確実にキープし、インゴールでグラウンディングした。



 南アフリカ代表20キャップを持つ27歳のエイトマンは集中しており、21分には相手のパスが乱れるといち早く拾い、右ライン沿いを約50メートル激走、サニックスWTBカーン・ヘスケスの猛追を振り切った



 もう1人のインターナショナルプレーヤー、元オーストラリア代表のSOマーク・ジェラードも、力強いランとテンポのよい配球で攻撃の核となり、トップリーグチームを慌てさせた。



 今季新しく入った選手たちが好影響をもたらした。大卒ルーキー、移籍組、外国人もチームに早く溶け込み、特に経験豊富な新外国人選手たちは盛り上げるのが上手だった。相乗効果で日本人選手たちもノッた。負けてもあまりネガティブにならず、次に向けて切り替えられる力が少しついた。それも、この一年間で成長したものは何か、という問いに対する指揮官の答えだ。



 あっという間に29点差をつけられ、とにかく走りまくったサニックス。しかし、豊田自動織機のディフェンスは出足鋭い。ラックへの集まりも速く、ブルースの9番にプレッシャーをかけ続けた。こちらも負けじと、走る、走る。まるで激しい殴り合い。前半30分を過ぎたころから、豊田自動織機のなかには足が止まりかけの全力ファイターがいたが、控え選手7人をすべて使い切り、サニックスの追い上げを止めた。



 80分間の激闘後、仲間と談笑するカンコウスキーに聞いた。
「トップチャレンジのラストゲームでコーク(コカ・コーラウエスト)
に大敗してから、選手たちはステップアップしようと本気で練習に取り組んできた。今日の試合は本当にハードだったけど、シーズン最後にいい結果が出せてとてもハッピーだ」



 世界最高峰の戦いを知るスプリングボックはまだ少し興奮気味で、冗舌だった。
「新外国人選手が入ってチームが変わったと言ってくれる人がいるけど、
たった2、3人が活躍したところでどうにもできない。チーム全員がいいパフォーマンスをした結果だよ。シーズンが始まる前に、大きく前進しようと誓い合って取り組んできた。お互いに信頼し合ったんだ。一年間やって若手もたくましくなり、まったく違うチームになったと言えるくらい成長したと思う」



 カンコウスキーは今週中にも帰国し、古巣のシャークスに合流する予定だ。オフシーズンはほとんどないまま、次は南半球スーパーラグビーに挑む。南ア代表復帰をあきらめてはいない。だから、再び日本に戻って来るかどうかは未定だ。


 しかし、トップリーグでプレーしてみたい気持ちはあると彼は言った。それに、新しい歴史を創ろうとしている豊田自動織機に愛着がある。
「シャトルズはまだまだ若い集団だ。トップサイドで戦うチームはどこ
も必死で、簡単に勝てるものではない。課題も多いので、来季に向けてまた集合するときはゴールをしっかり定めて、みんなで同じ方向を向くことが大事だと思う。そうすれば、きっといい勝負ができる」


 

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