国内 2013.02.05

【暗】 まさかのトップリーグ降格 勝ち方を忘れたサニックス 

【暗】 まさかのトップリーグ降格 勝ち方を忘れたサニックス 


sanix


シーズン最後まで苦しんだブルース


(撮影:Hiroaki. UENO)


 



 エキサイティングなアタッキングラグビーで観戦者を魅了する福岡サニックスブルースを、来季トップリーグで見ることはできない。入替戦に負けてしまった。ハングリーに昇格を目指した豊田自動織機シャトルズに28−34。2013年2月3日、福岡・レベルファイブスタジアムで味わった悔しさを、ブルースは決して忘れないだろう。9季ぶりにトップキュウシュウへ降格する。



「トップリーグを14位で終えてから入替戦までの間、怖かった。開幕戦(9月1日:九州電力戦)を最後にずっと勝っていなかったので、勝ち方を忘れていたからです。先週もNTTドコモと練習試合をしたけど、勝てなかった。実力はウチの方が上かもしれませんが、勝ち方というのは大事で、この1カ月間、ずっと不安でした」
 12年目のベテラン、FL菅藤友の言葉だ。
 走力を最大の特長とするサニックスは今季、レベルアップしているト
ップリーグでより高みを目指し、ウィークポイントであるセットプレーやモールでの肉弾戦から逃げず、真っ向勝負にチャレンジした。しかし、新しいスタイルは浸透に時間がかかったか、それとも混乱をきたしたか、長いトンネルを抜け出すことができなかった。



 入替戦。開始5分、ラインアウトからのモールで先制トライを奪われた。3分後には相手NO8ライアン・カンコウスキーにビッグゲインされ、2本目を許す。それから6分後、自陣22メートル内のブレイクダウンでターンオーバーされ、守りを修正できないままサニックスはまたも後退した。相手の焦りをあざ笑うかのように豊田自動織機は攻め込み、FL小山田岳が右隅に飛び込んだ。ラッキーバウンドも味方に付けた織機は勢いづき、21分と26分にもゴールラインを越え、なんと5連続トライ。



「最初に波に乗れず、焦りだしたのかもしれません。タックルミスもあり、簡単に取られすぎました。気持ち的にはみんな、まだ大丈夫だと思っていたんですけど…。自分たちのアタックのことばかり考えすぎて、ディフェンスがおろそかになったかもしれない」(サニックス・永下安武キャプテン)



 前半26分で、0−29。ブルースの痛快な走りを楽しみにしていたファンのため息が悲鳴に変わっていた。しかし、取られたら取り返すのがサニックス劇場だ。32分、WTB濱里耕平がようやくインゴールに侵入したとき、ファンはミラクルを信じたに違いない。
 前半の終わりを告げるホーンが鳴るなか、敵陣22メートル内でペナ
ルティを得たサニックスは速攻を仕掛け、LO野田忠がスルリと抜けて、トライ。14−29で折り返した。



 後半もハードな攻防は続いた。凄まじい走り合い、ぶつかり合い。しばらく電光掲示板は変わらなかったが、62分、CTB坂井克行がファイブポインターとなり、豊田自動織機がリードを広げた。サニックスは相手の厳しい守りをなかなか突破できず、リズムをつかみかけてもハーフバックが襲われ、何度も好機を逸した。
 それでも67分に濱里耕平が2本目を挙げ、71分には右WTBカーン・ヘ
スケスだ。驚異的な突破力を持つヘスケスは、この大一番に先発出場し、徹底マークで止められていた。疲れの色はにじんでいたが、左サイドを強引に振り切り、執念のトライ。ゴール決まり、28−34。ワンチャンスで逆転可能な6点差に迫った。



 しかし、ラスト8分間、豊田自動織機も死力を尽くした。福岡サニックスブルースは、ミラクルを起こせなかった。



「前半に取られすぎ。攻めても簡単にゲインを切らせてもらえず、本来はもっと速い球出しをしたかったんですが、そこでだいぶプレッシャーをかけられた。(今季は)どのチームも力をつけていて、なかなか自分たちのラグビーをさせてもらえなかったです」
 降格が決まったあと、藤井雄一郎監督は厳しい表情で言った。
「これが実力だと思います。まだ頭が整理できないですけど、チームが
残るなら、1年でトップリーグに帰りたい、ということしか言葉はありません」
 幸い、来季もブルースは存続する。「トップリーグ復帰を目指すなら
死ぬ気でやれ」と、のちに社長が明言したという。



 2004年1月25日、大分・九州石油ドーム。負けたら終わり、勝てば生き残るというラストマッチで、サニックスは42−45で近鉄に敗れ、トップリーグからの降格が決定した。あのときの悔しさを、菅藤友は知っている。
「トップリーグ初年度、ボクはレギュラーに定着していなかったんです
けど、その試合はスタメンで出させてもらったんです。(豊田自動織機戦で)最後の笛が鳴った瞬間、昔落ちたことを思い出しました。あの頃、自分は若かったけど、あと1年ラグビーができるんだろうか、精神的に持つのかと、すごく不安になったのを憶えています。同期でずっと一緒に頑張ってきて、今日の試合に出ていないメンバーもいる。自分は代表するつもりでプレーしたので、申し訳ない気持ちです」


 トップリーグに上がるまでの過程がどれだけ大変かというのを知っているから、昇格までの道のりはすごく遠く感じるだろう、と経験者は言った。


「今度、絶対に1年で上がらないといけない。そのモチベーションを知っているのはシニアのメンバーしかいないから、どうやって下のメンバーに伝えていくかが、重要になると思います」


 

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