国内
2012.11.22
【早慶戦/慶應スポーツ新聞会イチオシ】 プレーで語る副将 鈴木貴裕
けがから復活した慶大WTB鈴木貴裕
(写真:慶應スポーツ新聞会)
言葉数は多くないが、泥臭いプレーで周囲を鼓舞する副将。それが鈴木貴裕だ。ボールを持てばゲイン、敵が迫ればタックル。常に挑み続ける彼の背中は、言葉がなくとも雄弁である。
今年副将に就任した鈴木だが、対抗戦は今季初出場。これまでは、けがに苦しんだ3年間だった。初戦・筑波大戦に強い決意で臨んだが、そこでまさかの負傷退場。薬指の開放脱臼で全治2カ月を宣告された。試合から離脱し、焦燥感が募る。しかし、「試合に出る」。これまで何度も誓った言葉が、鈴木を突き動かした。不屈の精神で、2カ月を待たずして試合に復帰。誰よりも熱くプレーする男が、対抗戦の舞台に戻ってきた。
痛みはまだあるが、一度グラウンドに上ればそんなことは関係ない。一試合の重みや勝利の貴さを知るからだ。自分に求められるプレーを、全力で、熱く、泥臭く。目指す像はぶれない。
慶應中等部出身の鈴木にとって、早慶戦は「特別」。幾つもの熱闘が目に焼き付いている。バックスリー争いは激しく、誰がスタメンで出てもおかしくない状況だ。それでも、試合に出たならば「自分のプレーで勝ちたい」。けがをした悔しさ、副将としての責任感。そして、勝利へのたぎる情熱。すべての思いを懸けて戦う――。トライを奪う。伝統のタックルでワセダを止める。静かに熱く闘志を燃やす鈴木が、己の手で早慶戦勝利を奪取する。
(文・慶應スポーツ新聞会 原直生)