国内 2012.01.09

神戸高専が3年ぶりの優勝 震災乗り越えた仙台高専は栄冠獲得ならず

神戸高専が3年ぶりの優勝 震災乗り越えた仙台高専は栄冠獲得ならず


kobe 2


70分間走り抜き、3年ぶりに高専ラグビーの頂点に立った神戸市立工業高専の選手たち


 


 


 第42回全国高等専門学校ラグビーフットボール大会の決勝戦が9日、兵庫・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で行われ、神戸市立工業高専が前年度王者の仙台高専・名取を22−12で破り、3年ぶり8度目の日本一に輝いた。震災を乗り越えファイナルステージの舞台に立った仙台高専だったが、走力に自信を持つ神戸高専に揺さぶられ、優勝杯を郷土に持ち帰ることはできなかった。


 


 序盤は硬さが目立った両チーム。特に仙台高専はラインアウトで苦しみ、得意のFW戦が機能しなかった。神戸高専もハンドリングエラーでチャンスをつなげられずにいたが、キャプテンのFB山口大典のビッグブレイクでBK陣が目を覚ました。19分、敵陣10メートルライン付近で相手キックボールを手にしたFB山口が、一直線の力強い走りでカウンターアタックを狙い、ゴール前5メートル近くまで大きく前進。ラックからすばやく展開し、コースよく走ってきたCTB張本秀次がトライを獲得した。
 その後も神戸高専のBKが勇敢にタテを突いたが、必勝を期した仙台フィフティーンは必
死に守り、5−0で前半の35分間を折り返した。


 


 後半に入っても、走力で勝る神戸高専の優勢は変わらなかった。FW陣も躍動し始め、6分、ゴール前ラックの攻撃からNO8北勝達也が押し込んでトライ。
 主導権を相手に握られ、苦境に立たされた仙台高専。しかし、キャプテンのNO8小畑毅
道が体を張ったプレーでボール争奪に執念を見せると、サポーターのボルテージも上がり、チームメイトも発奮した。16分、相手22メートル内でのペナルティから速攻を仕掛け、FW陣が連続突進。そしてLO鈴木理史が171センチの体を目一杯伸ばし、インゴールにボールをねじ込んだ。
 その後、ペナルティゴールを決められて8点差とされた仙台高専は25分、ゴールライ
ンを背後にしての劣勢スクラムから、猛タックル連発で2度もゴールを死守したが、3度目は神戸LO小泉洋補が飛び込んで勝負は決まった。
 それでも、頭を上げ続けた仙台高専はロスタイムに怒涛の攻撃を見せ、SO佐藤駿のブ
レイクスルーでゴール前まで迫ると、ペナルティからの速攻でFW・BKが一体となってゴールを目指し、最後はPR蟻坂亮介が必死に腕を伸ばして執念のトライを挙げた。


 


 ファイナルスコアは22−12。栄冠は神戸高専に輝いた。


 


 勝者、山口キャプテンはチーム一丸の勝利に満面の笑顔を見せた。
 「この一年はウェイトトレーニングをしたあとに走り込みを取り入れてきたので、走り
負けることはないと思っていました。前年度の準決勝で仙台に敗れたときはFWで圧倒されたので、サイズが小さい自分たちは走り勝つしかないと。春先に天理高と練習試合をさせてもらい、タテの攻撃にヒントをもらったんです。外に振るより、ボールを下げないことを意識してタテへの走りを磨いたことが実を結んだと思います。FWも最後まで集中していたので流れが崩れなかった。震災を乗り越えて挑んできた仙台高専には執念を感じましたが、自分たちも彼らの気迫に負けないよう、精一杯やりました」。


 


 敗者、小畑キャプテンはこの一年を振り返ろうとすると涙が止まらなくなった。
 「東北は震災に遭って、自分たちもいろんな人に支えられてきました。だから例年以上
に、『なんとしても優勝したい』という気持ちを持って挑んだ大会でした。練習を本格的に再開できたのは5月くらいから。野球部のグラウンドを使わせてもらったり、他校の練習場をお借りしてやってきました。試合前、『いつも通りやろう!』とみんなに声をかけて臨みましたが、初めて全国舞台を経験する者も多く、普段通りのプレーをするのは難しかったです。すばらしい、最高のチームでやれたことを誇りに思います。ただ、キャプテンとして優勝させてやれなかった……。すごく悔しいです。でも、最後までみんな意地を見せて走ってくれました。来年こそはやってくれると思います。応援してくれた人たちに優勝の報告はできなかったですけど、胸を張って帰りたいです」。



 


natori


準優勝の表彰を受ける仙台高専名取。右が小畑キャプテン


 


 

PICK UP