海外 2023.05.06

リーグ再転向発表のトゥイヴァサ=シェック(ブルーズ)が復帰。W杯への切符をつかむ活躍はあるか

[ 松尾智規 ]
リーグ再転向発表のトゥイヴァサ=シェック(ブルーズ)が復帰。W杯への切符をつかむ活躍はあるか
3月18日におこなわれたクルセイダーズ戦でのトライシーン。5月6日のモアナ・パシフィカ戦では12番で先発。(Getty Images)



 RTSことロジャー・トゥイヴァサ=シェック(ブルーズ)がいよいよ復帰する。
 トゥイヴァサ=シェックは、今年のワールドカップ(以下、W杯)のメンバーに入ることができるのか。この議論は、ニュージーランド(以下、NZ)メディアを始めラグビーファンの間でも多く語られている。

 ブルーズに所属する29歳は4月20日、2024年にラグビー・リーグ(以下、13人制)に戻ることを発表し、NZ国内をざわつかせた。
 それがビッグニュースとなったのは、ラグビー・ユニオン(以下、15人制)より13人制の方が圧倒的な人気を誇る、隣国のオーストラリアでも同じだったようだ。
 来季から RTSを迎え入れるウォリアーズ(NRL)のファンは、大スターが戻ってくることで大騒ぎになっている。

 トゥイヴァサ=シェックは13人制の大スターだった。2021年のシーズンを最後に、13人制から15人制へ切り替えた。2022年からブルーズ入りの発表をして世間を騒がせた。

 当時も今回の発表と同じように、ニュースが大きく取り上げられた。近年勢いのないオールブラックスの救世主になれる。NZのラグビーファンの誰もがそう思ったに違いない。
 それだけトゥイヴァサ=シェックが13人制で見せていた、ディフェンスを切り裂くランプレーは驚異的だった。

 今回の移籍発表後、「13人制ではグレイトだったが、15人制では、グッド止まりだ」、「13人制に戻るのは正解」等などトークバックラジオでは、論議が活発になっていた。
 メディア、そしてファンの多くが、これまでのパフォーマンスが期待通りではなかったと思っている。

 アンラッキーだった面もある。
 トゥイヴァサ=シェックが15人制にコードチェンジしたのは、2021年のNPC(NZ国内の州代表選手権)。ブルーズの支配下のオークランドで準備をして、翌2022年からスーパーラグビーに挑む事になっていた。

 しかし、当時はコロナ禍の真っ只中。デルタ株の陽性者がオークランドで一人発覚した際、世界一規制の厳しかったNZ政府は、即座にオークランド地区のロックダウンを決めた。
 NPCデビューの直前の出来事だった。しかもロックダウンが年末頃まで続いた。

(※=オークランド地区のロックダウンは、他の地区への移動さえも許されず、オークランド、ノースハーバー、カウンティーズ・マヌカウの3チームには、NPCの出場の許可が下りず。2021年のNPCは3チームを省いたチームでの途中からの開催となった)

 規制により、まともなチームトレーニングが何か月もできなくなった。
 これによりトゥイヴァサ=シェックは、十分な準備ができないままスーパーラグビーの舞台に挑むことになったのである。

 当時、トゥイヴァサ=シェックのポジションをどこにするかの話題があったのを思い出す。持ち味のランプレーを最大限に活かすためには、バックスリー(WTB、FB)の予想が多かった。
 しかしブルーズのレオン・マクドナルドHCは12番で使うと明言した。
 隣(10番)にワールドクラスのボーデン・バレットがいるので、うまくリードしてくれる。そんな雰囲気が感じられた。

 実際は甘くなかった。
 15人制は13人制より複雑であるため、戸惑いがあったように見えた。真面目な性格ゆえ、すべてを完璧にやろうとして本来の持ち味を萎縮させていたかも知れない。

 13人制での活躍ぶりを知っているファンや関係者の期待度は高かった。
 派手な活躍はなかったものの、オールブラックスの指揮官イアン・フォスターHCは、直ぐにトゥイヴァサ=シェックを代表メンバーに入れた。
 しかし昨年は、アイルランドとのシリーズでの負け越しから始まり、苦戦の年だった。それゆえ15人制での経験の浅いトゥイヴァサ=シェックの出場機会は少なく中途半端な起用になった。 

 アンラッキーだった面はあったものの、13人制で驚異的な活躍と比べれば、程遠いパフォーマンスだった。
 それは、本人が一番感じている事だろう。それが今回の決断に繋がったかもしれない。自分自身が一番活躍できるところに向かうことは自然の流れだ。
 ブルーズで、そしてオールブラックスでやり残したことをやり切って、新たな道へ踏み出したいところだろう。

◆トゥイヴァサ=シェックは、W杯のメンバーに選ばれるのか。

 先日、出演した番組内でフォスターHCは、トゥイヴァサ=シェックが来年13人制に戻ると決めていても、まだ選ばれる(オールブラックス)資格があると明言した。
 しかし、今のままでは、選ばれることはないだろう。
 課題は2つある。
 1つ目は、攻撃面で本来の持ち味を発揮できていない事だ。
 2つ目はディフェンス面。昨季、今季ともに、大事な場面でタックルミスからトライを与え、試合を決められるシーンがあった。それではチームが、W杯のプレーオフなのどの大事な試合でリスクを背負うことになりかねない。

 フランス行きの切符(W杯)を掴むには、上記の課題をこなす必要がある。
 しかし、トゥイヴァサ=シェックの能力はハンパない。13人制での驚異的な活躍を再び15人制で見せてフォスターHCの心をつかむことができるか。

 この時期に移籍の発表は今後のプレーに集中するためだった。
 会見では、吹っ切れた感じの表情だった。失うものは何もないようにも見えた。やってくれそうな予感がする。

 今週(5月6日)、モアナ・パシフィカ戦でケガからの復帰戦を迎える。3月18日のクルセイダーズ戦以来のプレーとなる。
 12番で先発メンバーに入った。レギュラーシーズンは残り5試合とアピールの時間は限られてきた。

 トゥイヴァサ=シェックがディフェンスを切り裂くプレーが炸裂するだろうか。

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