ワールドカップ 2022.10.06

女子NZ代表、ワールドカップ2連覇&6度目の優勝に向けて出陣!

[ 松尾智規 ]
女子NZ代表、ワールドカップ2連覇&6度目の優勝に向けて出陣!
女子NZ代表“ブラックファーンズ”のハカも迫力満点(Photo: Getty Images)


 ラグビー女子ニュージーランド(NZ)代表“ブラックファーンズ”のワールドカップでの成績は驚異的だ。前回の2017年大会チャンピオンチームで通算5回の優勝を誇り、そのうち1998、2002、2006、2010年の大会を制して4連覇をしている。男子NZ代表“オールブラックス”の優勝3回(最多タイ)を上回る成績には驚かされる。

 自国で開催される今回のワールドカップ後に引退することを表明しているベテランのケンドラ・コックセッジとレニー・ウィックリフにとっては4度目のワールドカップ出場となる。この2人を含む合計8人の選手が2017年の優勝メンバーとして今大会に挑む。

 しかし、ここまで順調だったわけではない。昨年末の欧州遠征の4連敗(対 イングランド2試合、フランス2試合)だけでなく、チーム内で発覚した内部の問題により、ワールドカップのわずか半年前に首脳陣を大きく入れ替えた。2011年に、24年ぶりにウェブ・エリス・カップ(男子ラグビーワールドカップ)をNZに取り戻すことに成功したグラハム・ヘンリー(HC)をはじめ、ウェイン・スミス、名スクラムコーチのマイク・クローンといった優勝請負人ともいえる3人を加えたのだ。

 ブラックファーンズのディレクター(兼HC)のウェイン・スミスは、速いテンポのラグビーを目指している。この半年間多くの選手にチャンスを与え、チームの底上げをおこなってきた。それによりスキルレベルも上がり、選手の層も昨年より厚くなり強さを取り戻してきている。

共同で主将を務めるルアヘイ・デマント(左)とケネディー・サイモン(Photo: Getty Images)

≪優勝候補の一角 女子NZ代表の紹介(キャプテン&注目選手)≫

【キャプテン】(2人の共同キャプテン制)
●ケネディー・サイモン
10代で日本に留学し「北海道バーバリアンズディアナ」でセブンズの選手として活躍。NZに帰国後、地元に戻りワイカトでプレーし、15人制でも力をつけ2019年に代表デビュー。ポジションはFLとNO8で、パワーもさることながらセブンズ経験からスピードとスキルも持ち合わせている。女子セブンズNZ代表キャプテンのサラ・ヒリニとのポジション争いも注目。

●ルアヘイ・デマント
両膝の前十字靭帯断裂を経験するなど、けがに泣かされていた時期があったが、時間をかけて乗り越え、自国開催のワールドカップでキャプテンとしてチームを率いる。自ら突破できるキレのあるランプレーがデマントの特徴で、相手にとっては嫌な存在になりそう。

身長182センチ、体重91キロのジョアナ・ガンウー(Photo: Getty Images)

【注目選手】
●ターニャ・カルーニバレ(PR)
フィジー出身のパワフルなプロップ。課題のフィットネスも努力で克服し、今年デビューを果たした。178センチ、128キロのサイズは男子の中に入っても見劣りしない。スクラムも強力だが、一番の持ち味は破壊力抜群のボールキャリーで、相手選手を蹴散らす姿がワールドカップでも見られるだろう。愛嬌も抜群で人気も出そうだ。

●ジョアナ・ガンウー(LO)
中国とサモアの血を引くガンウーは、2019年に代表デビュー。フィジカルの強さが魅力でボールを持った突進はブラックファーンズの武器になるだろう。突破役だけでなく、リンクプレーもしっかりできるスキルも身につけた。

●チェルシー&アラナ・ブレムナー姉妹(FL、LO)
NZ国内選手権で優勝したカンタベリーのメンバーでもあるブレムナー姉妹、2人揃って初のワールドカップとなる。黒髪の姉チェルシー(LO)、金髪の妹アラナ(FL)の2人ともラインアウトの核になる選手だ。疲れ知らずのフィットネスでフィールドを駆け回る姿が特徴で、ウェイン・スミス(HC)の目指す速い展開のラグビーにもってこいの姉妹。

●ケンドラ・コックセッジ(SH)
ブラックファーンズ歴代最多のキャップ数(大会前で62キャップ)を誇る。157センチと小柄ながらも、抜群の状況判断を持ち合わせ、パスだけでなくキックもうまく、まさにチームの大黒柱。オールブラックスで言うとリッチー・マコウ、ダン・カーターといったレジェンドと同等の存在だ。有終の美を飾ることができるか。

●ポーシャ・ウッドマン(WTB)
父と叔父が元オールブラックス、母は元ネットボール代表選手で、まさにサラブレッド。彼女もネットボールの選手だったが、2012年にラグビーユニオンに転向してすぐに頭角を現した。主にセブンズでプレーし、ワールドセブンズシリーズで通算200トライを記録した初めての女子選手となった。先日、セブンズから合流してきたばかりの日本代表戦では7トライを挙げる大活躍で、15人制にもすぐに適応した身体能力には驚かされる。最も注目する選手だ。

●アイエシャ・レティ・イイガ (WTB)
フロントローのような風格ながらもスピードを持ち合わせており、ボールを持たせたら危険な存在だ。まるで女性版のジョナ・ロムー。今年に入り、ワークレートも増えて信頼感も得られるようになった。

●ヘーゼル・トゥビック(ユーティリティBK)
数年前まで日本の「ながとブルーエンジェルス」でセブンズの選手として活躍していた。男性並みのキック力が魅力で、10番、15番の2つのポジションをしっかり任せられる貴重な存在。キックだけでなく強気なランプレーも魅力で、ベンチに置いておくにはもったいない。ブラックファーンズの隠し玉的存在になりそう。

CTBのエイミー・デュプレッシーも若手注目株のひとり(Photo: Getty Images)

≪ブラックファーンズの開幕戦メンバー≫

 2大会連続6度目の優勝を目指すブラックファーンズは、10月8日にオークランドのイーデンパークでおこなわれるプールAの初戦でオーストラリアと対戦する。
 共同キャプテンのFL/NO8ケネディー・サイモン、PRターニャ・カルーニバレ、FLアラナ・ブレムナー、WTBアイエシャ・レティ・イイガなど、今年活躍していた主力がけがで欠場となるものの、セブンズ選手の加入により強力なメンバーを組んできたと言える。

 サイモンのけがにより、セブンズ代表キャプテンのサラ・ヒリニが先日の日本戦に引き続きワールドカップの開幕戦でも7番をつけることになった。
 その他、セブンズから合流したばかりのステイシー・フルーラーを13番に抜擢、いま売り出し中で突破力のある12番エイミー・デュプレッシーとのセンターコンビは、注目したいところ。

 ポジション争いが一番激しいWTBは、世界的なセブンズスターのポーシャ・ウッドマンが11番に入り、パワフルなランで観客を魅了するだろう。ワークレートとスキルの高いルビー・トゥイが14番に入り、昨年の東京オリンピックで金メダルを獲得した4人がワールドカップ開幕戦の先発メンバーに名を連ねることになった。

 現時点でのベストメンバーをまだ公表していない指揮官は、引き続き準々決勝までは、ローテーションで行くようだ。
 ブラックファーンズは、初戦のオーストラリア戦後は、ウェールズ(10月16日)、スコットランド(10月22日)と対戦する。

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