国内 2022.09.05

一橋大が創部 百周年。Honor is equalの精神で人を育てる。次の百年も。

[ 編集部 ]
一橋大が創部 百周年。Honor is equalの精神で人を育てる。次の百年も。
会の冒頭、進藤孝生OB会長(日本製鉄会長)がスピーチの中で部是を紹介した。(撮影:一橋大)
森名誉会長も出席、挨拶で会場を沸かせた (撮影:一橋大学)

 1972年10月は大学4年生だった。

 現・日本製鉄会長の進藤孝生さんは、一橋大ラグビー部のOBで、現在はOB会長を務めている。忘れられないのは主将として臨んだ東大戦。一橋大51-6東大。東大駒場グラウンドに歓声が響き渡った。対東大36年ぶりの勝利だった。

「その時も、今も、一橋は現役とOBと関係者が共同体のような感覚があります。セレクションの入学はなく、初心者もいる中で、勝利を目指して工夫するのがいい」

 9月3日、東京・如水会館で一橋大学ラグビー部創部百周年記念式典、祝賀会がおこなわれた。

 来賓には森重隆日本ラグビー協会名誉会長らラグビー界の重鎮をはじめ、中野聡学長もお祝いに駆けつけるなど、およそ250人の盛会となった。

 一橋大学ラグビー部は1922年に、学生の藤野嘉蔵氏らによって東京商科大学ラグビー部として設立された。戦前は「七大学対抗戦」に所属して発展、戦後2年目には試合を再開するなど精力的に活動を継続してきた。1985年に対抗戦に復帰し、今はBグループに編成され、上位との入替戦を目標に切磋琢磨するしている。2014年にはBで2位に食い込み、初めて入替戦に出場した。この戦績を超えるのが今の目標だ。

 OBたちのサポートも手厚い。その象徴は、1961年に国立(くにたち)キャンパスそばに構えた専用のグラウンドだ。2008年には人工芝へのリニューアルもおこなっている。

 一橋大OBはラグビー界に絞っても錚々たる顔ぶれが並ぶ。第6代の日本ラグビー協会会長・椎名時四郎氏をはじめ、関東協会理事長、日本協会レフリーソサエティ委員長を務めた品田通世氏ら枚挙にいとまがない。リーグワン専務理事の東海林一氏、日本協会co-CEOの池口德也氏もかつて同じジャージーをまとったファミリーだ。

 東海林氏は高校までは野球部だった。「国立(くにたち)のグラウンドで、ラグビー部の自由な雰囲気に魅了されて入部を決めました」。池口氏は「リーグワンの選手を輩出することは難しくても、僕らには僕らの存在意義がある。ラグビーの価値を深め広げていくことのために、働いていきましょう」と呼びかけた。

 平成12年卒のOBである近藤吉泰監督が率いる現役は現在、選手30名、マネージャー7名の小さな所帯で踏ん張っている。他の例の漏れず新型コロナの蔓延は部員数に打撃を与えた。たとえば2014年は50人ほどの部員がいた。主将、島田耕成は部史の最先端で前を向いている。「今年は3年生が勧誘を頑張って、8人の新人を獲得してくれました」。組織で戦うこと。規律を守ること。シンプルなモットーが力強い。本郷高校でNO8を務めていた島田は進学にあたってまず大学を決めた。トップ校を目指し、他大学も訪れた。しかし、一橋のキャンパスの空気に魅力を感じた。

「自然豊かで、自由で。学園の雰囲気がしっくりきた」

 一橋の部是は“Honor is equal.”。

 進藤会長は会の冒頭に紹介した。

「100年間、先輩から後輩へと語り継がれてきた“Honor is equal.”というフレーズ、これは、トライした者だけでなく、パスをつないだ者、タックルで敵の突進を防いだ者、スクラムで圧力に耐えた者。役割は違っても、受けるべき栄誉、不名誉は皆等しい――という意味です」

 ラグビー精神そのものとも響き合う教えのもと、強い代も苦しんだ代も巣立ったOBが「経済、社会の最前線で活躍し、そのモラルを支えて」(進藤会長)いく姿は変わらない。国立のグラウンドには、きょうも将来のリーダーたちが走る。

PICK UP