ジョージ・クルーズ、現役最終戦後に語る。ワイルドナイツの強さの理由は?
32歳。決勝が現役最終戦となった。
イングランド代表、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズで計46キャップを獲得したジョージ・クルーズは、5月29日、日本のリーグワンのプレーオフファイナルで埼玉パナソニックワイルドナイツの背番号5をつける。
18-12。東京サントリーサンゴリアスを下す。東京の国立競技場を、アスリートとしての最後の舞台とした。
「このように本当に素晴らしい形でキャリアを終えられる人はそういないと自覚しています。うれしく思います」
この日は相手のラインアウト獲得率を「10/15」と狂わせた。空中でクルーズ、ジャック・コーネルセンのLOが圧をかけた。
主将でHOの坂手淳史は、試合後にこう証言していた。
「(準備段階では)特にジョージがよくしゃべってくれていた。今週は基本を大事に、少しポッド(位置が)がずれたとしても投げるタイミングで飛ぶ。プレッシャーをかける。…それを意識しました」
1点リードで迎えた後半33分、ディラン・ライリーがトライを決めた。18-12。その起点は、敵陣22メートル線付近右のラインアウトだった。クルーズが捕球した。
以後の連続攻撃でもクルーズは献身。接点から出た球を受けて突っ込み、援護役として相手のジャッカルを防ぎ、タックラーをひきつけながらのパスで味方の前進を促した。「瞬間、瞬間のプレーはあまり覚えていないです」と笑った。
守っては堅陣を敷いた。味方と協力し合って接点でテンポを鈍らせた。
「きょうは、エリアをマネージして身体を張るのが大事でした。相手のダミアン・マッケンジー(サンゴリアスのゴールキッカー)は、自陣であればどんどんゴールを決められるので」
来日後の2シーズンを通し、前身のトップリーグを合わせて国内2連覇を達成した。ワイルドナイツの強さの秘訣は、「サラセンズに似ている」と述べる。
長らく所属していたイングランドのサラセンズの名を挙げ、強いクラブの特徴をこう語るのだ。
「オンフィールド、オフフィールドで選手が活躍する環境をサポートしてくれる。その文化があるからこそ、いいチームなのだと思います。このワイルドナイツを、家だと思えます」
身長198センチ、体重123キロ。防御ラインを整えながらのタックル、接点周辺での突進を重ねた。
現役最終年の今季は、実戦16試合中12度、先発し、フル出場はこの日が4度目だった。キックオフ前の整列の折、隣に今季初先発となったPRの藤井大喜がいた。
クルーズは緊張気味に映った藤井の肩に腕を回す。耳打ちをする。
「スクラムで相手から反則を取ったら、1万円をあげよう」
本人の述懐。
「キャリア終盤にさしかかっている僕が、成長している藤井の助けになれればとね。彼にはこの試合をエンジョイしてほしかった」
ロビー・ディーンズ監督いわく、「彼は人間的にも好かれている。ユーモアが素晴らしい」。あらゆる意味で、勝つべきチームにいるべき選手だった。